第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(5)
突然ですが、「黄金バット」というヒーローをご存知だろうか。
昭和初期に紙芝居に登場したらしいのだが、このころは著作権が曖昧だったこともあり、さまざまな人々によりグッツや続編が製作されたらしい。
実際、我々に認知されたものは、戦後の実写映画やアニメによるもののようだ。
ところで、小さい頃から疑問に思っていたのだが、「黄金バット」は何故ヒーローになれたのだろうか?
外見は金色のガイコツである。
容姿は、まさに悪役以外の何者でもない。
肉も皮も顔の表情もない・・・まるで小学校の理科室にある人体の骨格である。
入学して、初めて見た人体の標本・・・・・・・あまりの衝撃と恐怖で、眠れない日々が続いたものだ。
さて、「黄金バット」は、突然変異により生まれたものなのか。
劇薬により骨格がカルシュウムの白色から、ピカピカの純金に変わってしまったのか。
彼は人間なのか・・・・性別は男性なのか女性なのかオネーなのか・・・アンドロイドなのか、外国人なのか・・・・あのゴールドは、24Kなのか18Kなのか単なる金メッキなのか・・・・・はるかアンドロメダ星雲からやって来たものなのか?
・・・・・そうなのだ・・・・・・・誰も知らないのだ。
ただ・・・・・・コウモリだけが知っているらしい。
何故なら・・・・・、歌詞のなかで、そう謳っているからだ。
それになにより、とにかく強いのだ。
何故なら・・・・・劇中のナレーターが、「強い、絶対に強い!」と、何度も繰り返して言っているから間違いない。
まさに最強のヒーローなのだ。
もしも歴代のヒーローを集めて、トーナメント形式で対決したのなら、ぶっちぎりの優勝を果たすことであろう。
決して解明できない謎が、おおいに日本全国のチビッコたちに受けたのだ。
しかし、ただ一つだけわかっていることがある。
それは、一万年の眠りから目覚めた黄金バットが、美しい少女が助けを求めると、どこからともなくやって来るということだ。
彼は謎に満ち溢れた存在であるのだが、その宿敵が、なんと四つ目の覆面を被ったナゾーという怪人なのだ。
謎また謎・・・・・どこまで行ってもわからない理不尽さ・・・・・まるで出口の見えない迷宮・・・・・ありあまるほどの謎・・・そして、わけのわからないことだらけの満腹感が・・・ヒーローの条件なのかもしれない。
・・・・・・・だが、私は知っていた。
「黄金バット」が、どこからやって来るかということだ。
それは、故郷の赤城山を見て気が付いたのだ。
・・・・・ズバリ・・・赤城の鍋割山からやってくるのだ。
みごとにへこんだ噴火口から、まるで電光石火のごとく飛んでくるのだ。
それを確かめようと、何日も観察をしたことがあったが・・・・・結果はムダだった。
・・・・何故なら・・・・・やはり、電光石火だからだ。
!!!!!!!!
かつて、ジミー隊長がイセヤで買ったばかりのシャツを見せにやって来たことがあった。
彼は、とくいになってシャツの一部分を指差していたのだが、なんのことなのか、さっぱり理解ができなかった。
ただ、胸のところに小さな刺繍のような物があったような気がした。
「見てくれよ・・・・これだよ、これ・・・これ・・・これなんだよー!」
彼は自慢をしたくて、とにかく雄弁になっていた。
ハツが不思議そうに、隊長をナメルように上下にパンした。
「・・・・・・なんのことだんべか?」
隊長は、ハツの素っ気ない言葉にかなり落胆していた。
「おめーら、これが解んねんきゃー、バカじゃねーだんべか!」
再びハツが、隊長の胸元に近づいてマジマジとながめた。
「・・・んー・・・・ん・・・・カゴメかな?」
たしかに、その刺繍は羽を広げた鳥のように見えた。
「なにー、カゴメだとー・・・・・この、ケチャップ野郎が!」
隊長は、自分の思いが伝わらないことにイラツいていた。
・・・・・私は、もしかしてと・・・思い付いたことを口にした。
「黄金バットの・・・・・コ・ウ・モ・リさんか?」
すると、いきなり隊長が抱きついてきたのだ。
「ハカチェ、おめーは話がわかるなー、うれしいぜー、うれしいぜー!」
隊長は、ラッキョウをたんと食べたようで、口臭がひどかった。
私は、笑いながら彼を無造作に突き飛ばした。
「これがあれば、怖いものなんてねーぜ・・・・・そうだんべー、ハカチェ!」
隊長は、してやったりと、ドン・ガバチョみたいな丸い顔を思いっきり紅潮させて、歓喜に浸っていた。
「どういうことだんべ、ハカチェ?」
ハツが不思議そうに、質問をしてきた。
「オメーん家は、テレビがねんきゃ・・・・・テレビで黄金バットていうんをやっているんべがな・・・・・女の子がコウモリさん助けてというと、どこからともなくやって来るんさー!」
「そいつは、強えーんきゃ!」
「あったりめーだ、テレビで強い、絶対に強いて言ってるから本当だんべがな!」
隊長が、口の廻りに大量のアワを吹かしながら、ムキになって答えた。
「ところで、そんな物を着て、どうするんきゃ?」
ハツが、又、不思議そうな顔をして質問をした。
「決まっているんべがな・・・ピンチになったら、黄金バットを呼ぶんさー!」
・・・・・・マジかと、思った。
小学校六年生にもなって、そんなことを彼は本当に信じていたのだろうか。
P・S
やはり、そうだったんです。
ノーテンキなジミー隊長は、すっかり信じ込んでいたのです。
ところが、二日後に、秘密基地の隊員の前に現れた彼は、炭酸饅頭みたいに顔を膨らませていたのです。
話では、昨日、乱暴者のトラとヤマにからまれて、ボコボコにされたのだそうだ。
自慢のシャツに縫い付けてあるコウモリに向かって、「コウモリさん助けて、コウモリさん助けて」と、何度もお願いしたのだそうだ。
・・・・・が、なにかの手違いか・・・無情にも黄金バットは現れなかったそうだ。
おまけに大事なシャツをボロボロにされ、自慢のコウモリさんの刺繍を引き千切られたのだそうだ。
そばで聞いていたハツが、顔をしかめながら一言発した。
「願い事は、女の子じゃねーとダメなんじゃねーのか?」
ハツの言うことは、ごもっともなことだった。
アニメでは、心優しき少女が「コウモリさん、助けて!・・・コウモリさん、助けて!」と、呼んでいる。
「なーるほどなー・・・なーるほどなー!」と、ジミー隊長も、その事をおおいに理解したようだった。
それ以来、何故か隊長の声は、1オクターブ上の高音になった。
だが・・・・・あれから何年もたったが、黄金バットがどこからともなくやって来たという話は、いまだに聞いたことはない。
・・・・・やがて、思春期をむかえた隊長の口の廻りは青くなり、ホモオダホモオになっていた。
はたして・・・彼はまだ、黄金バットの出現を信じて待っているのだろうか?
来月号に、つ・づ・く・・・♪♪♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス