第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(42)
その他の特訓の中には、「ノノシリ」という種目があった。
内容は言葉のマンマで、相手の弱点を指摘して、徹底的に追い込むやり方なのだが・・・・・一番残念だったのはチミー隊長で、滑舌の悪さから、たんと間が抜けていた。
「おいチノビ・・・おめーはプタ野郎だ・・・ウシ野郎だ・・・ウシ虫だんべー・・・オメーなんか、目じゃねーせーーー・・・!」
彼は、いつものワン・パターンの繰り返しばっかりで、「ノノシリ」よりも相手を笑わせて隙を突く攻撃に変更した方が良いように思えた。
追い込めば追い込むほど、ターゲットの笑をさそっていたのである。
それに、プタ野郎も、ウシ虫も、隊長の方がお似合いだったのだ。
だが・・・なんと言っても、「ノノシリ」の実力者ナンバー1は、ハツだった。
何故なら、彼は日常的に義母のオキヌさんからノノシられ、罵倒されていたからだ。
「おいデブ・・・おめーは生きている資格なんかあるんのかー・・・どうなんだよー・・・ずう体ばっかりデッかくてよー・・・おもしろい顔してよーー・・・はずかしくねんかーー・・・いいかげんに、しろよなーーー・・・!」
ハツはデブではなく、極度の栄養不足からくる虚弱体質のように見えたが・・・そう言った方が、相手に与えるダメージは大きかったのだろう。
彼は、義母のオキヌさんから学んだことを、そのまんま相手にぶつけるのだ。
だから、ハツの「ノノシリ」には、迫力があったのだ。
・・・・・ここぞとばかりに、日頃のうっぷんを晴らすため、隊長などはいつも耐えきれずに大声で泣いていたのだ。
ハツにとって隊長は最大のカモであり、ノノシリがいがあった。
幸せ太りのチミー隊長は、全員からここぞとばかりにノノシリ攻撃を受けていた。
そのため、この種目は隊長の一言で、すぐに削除されてしまったのだ。
!!!!!!!
特訓開始から5日後、我々少年ホースは、とうとうシノビの本当の姿を目にすることになったのだ。
その日、秘密基地で正直屋の売れ残りの果物を全員であさっていると、牛小屋の戸をドンドンと叩く音がした。
しばらくの間、ダンマリを決め込んでいたのだが、一向にその音は止まなかった。
「うるせんだよー、このプタプタ野郎めー・・・!」
ハツが、めんどうくさそうに戸を蹴飛ばすと・・・そこには・・・な・な・な・なんと・なんと・甘納豆・・・巨人がヌーーーンと直立していたのである。
ア・ワ・ワ・ワ・ア・ワ・ワ・ワ・ワオーーーーーン・ワオーーーーン・・・!
一瞬、恐怖で、全員の顔がひきつったのだ。
「・・・た・た・た・た・隊長・・・おねげーしまーす・・・隊長・出番ですー・・・た・た・た・た・隊長・出番ですよーーーーーー!」
ハツが驚いて大声で叫んだが、完全にオネエになっていた。
・・・そうだ!・・・今こそ、特訓の成果を見せつけてやる時だ!
チミー隊長が無言で、スッと立ち上がった。
彼は、りっぱだった・・・まさに、尊敬に値するリーダーだったのだ・・・が・・・大地震に直面したかのように、ヒザがクガクと揺れていて、いまにも倒れそうだった。
「オ・オ・オーーイ・・・オ・オ・オーーイ・・・チノビ・・・おめーはプタ野郎だ・・・ウシ野郎だ・・・ウシ虫野郎だんべーーー・・・おめーなんか目じゃねーせー・・・!」
練習どおりにできて、とてもおりこうさんだったが・・・何故か、空気が抜けていた。
その声は限りなく小さく、音域が裏返り、まるでモスキート音の様だったのだ。
団員たちは、隊長のやらかした感に、思わず吹き出してしまったのだが・・・!
同時に、身の危険と恐怖で、自然に両手を合わせ、ひれ伏してしまったのだ。
「た・た・た・・・たすけてくれーーー・・・・・おたすけ下せー・おたすけくだせーーー・・・巨人さま~~~~~~・・・・!」
トラオがパニクりまくり、白目をむいて後方に、ひっくりかえったのだ。
!!!!!!!!
ガク・ガク・ガク・ガク・ガックーーーーーーン・・・!
ガク・ガク・ガク・ガク・ガックーーーーーーン・・・!
・・・・・どっしりと構えていた巨人が・・・とうとう、動き出したのだ。
まさに「風前のともしび」とは、このことだったのだろうか・・・!
ガク・ガク・ガク・ガク・ガックーーーーーーン・・・!
ガク・ガク・ガク・ガク・ガックーーーーーーン・・・!
そして・・・・・なんと・なんと・甘納豆・・・とんでも8分・歩いて2分・グイーングイーーーンと群馬県・・・いいぞー・いいぞー・イナリ山・・・!
こともあろうに、ひれ伏している私に、巨人が覆いかぶさって来たのだーーーーー!
「うそだろー・やめてくれーーーー・・・・・た・た・た・・・たすけてくれーーー・・・・・おたすけ下せー・おたすけくだせーーー・・・巨人さま~~~~~・・・・!」
不覚にも・・・あまりの恐怖から、私は失禁をしてしまったのだ。
なんと・なんと・甘納豆・・・とんでも8分・歩いて2分・グイーングイーーーンと群馬県・・・いいぞ・いいぞ・イナリ山・・・ウエーン・ウエーン・ウエンツ英一!
・・・ズ・ズ・ズ・ズボンが~、ズ・ズズ・ズ・ズボンが~~~~・・・
ビショ・ビショになってしまったのだーーーーーーーー!
☆バンビー。  
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス