第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(88)
胸元をワシ掴みにしたヤマは、右手を大きく振り上げて、バシバシとカズコの頬を何度も張ったのだ。
その音は、遠くでジッと息をひそめて見守っていた少年ホースたちにも、ハッキリと聞こえるものだった。
あまりの恐怖に、仲間のハツは失禁をしながらガタガタと震えていた。
「お嬢さんに、こんな事はしたくはないんだがよー・・・でもねー・・・オレたちをゴミ呼ばわりしてくれちゃってるもんねー・・・訂正してよネー・・・ネー・・・ネー・・・!」
そう言うとヤマは、下から突き上げるかのようなパンチを匂わせながら、彼女のレバーを軽くなぜた。
だが、その時だった。
バシッという音がした瞬間、まるで大きな山が崩れるかのように、ヤマが嗚咽を漏らしながら、ヨロヨロとしゃがみ込んだのだ。
同時に、カズコのオーバーヘッドキックが、後ろから羽交い絞めにしていたトラの顔面に鈍い音とともにヒットしたのである。
彼の鼻からは、まるでロケット花火のように鮮血が空中に噴射されたのである。
しかし、戦いはそれで終わりではなかった。
スローモーション映画のように倒れていくトラの後頭部に、カズコの回転廻し蹴りが炸裂したのだ。
「あれは、アントニオ・イノキの必殺技・・・延髄切の進化系だぞー・・・!」
チミー隊長が、思わず興奮して、大声で叫んだ。
スゴイ、スゴイ、凄すぎるーーーー・・・・!
これは、華麗なる芸術だ、まるでサルチンバンコのように、見る者の心を揺さぶった。
スゲー、スゲー・・・ツル大先生もビックリだんべー・・・・!
!!!!!!!!!!
なんとなく拍手を送ろうとした時だった。
「やるじゃねーかよー、お嬢さんよーーー・・・!」
倒れていたヤマが、金的を抑えながら立ち上がろうとしていたのである。
蹴られた衝撃で、彼の金玉はソフトボールのように膨らんでいた。
「いつまでも、好き勝手にはさせねえぜー・・・!」
ヤマが、腹の底から絞り出すような声で威嚇したのだ。
「ゴミがしゃべったなー・・・!」
カズコはそう言うと、思いっきり左足を振り上げ、脳天蹴りの体制に入った。
ところが、両手をクロスしてヤマが防御したのだ。
「あぶねー、あぶねー・・・頭は大事だからなー、これ以上、おりこうさんになってもなー・・・モテモテになっちゃうもんなー・・!」
寸前のところで防いだヤマは、不敵な笑いを浮かべていた。
だが、勝ち誇った顔もそこまでだった。
クルリと回転をしたカズコは、両手のロックを器用に外して、華麗に前転をしたのだ。
「コノヤロー、調子にのってんじゃねーぞー・・・!」
ヤマが、怒鳴りながら立ち上がった。
すると、彼女は側転をしながら横の岩にジャンプをして、反動を利用して三角蹴りを仕掛けたのだ。
蹴りはストマックに命中したらしく、彼は腹を抱えて前傾姿勢になった。
すかさず顔面を蹴り上げると、おおきく後ろにのけぞった。
前に後ろに、なんとも忙しい男である。
そして、バキッという音と共に、金的に追いキックが決まったのだ。
ヤマのソフトボールは、サッカーボールのように立派に膨らんでいった。
!!!!!!!!!!!!!
「このアマめー、いつまで調子こいてんだー・・・!」
ところが、さっきまで倒れていたトラが、背後から、もの凄い形相で飛び掛かってきたのである。
カズコはバク転をして石の上に着地し、反動を利用して、飛び足刀蹴りを仕掛けたのだ。
おみごとに、彼の鼻からスターマインのように空中に鮮血が飛び散った。
ファイティングポーズを忘れて棒立ちになっているトラの金的に、カズコの追いキックが、正確に命中したのである。
彼は、下痢をしたカエルのように地面に大の字に這いつくばった。
「チェ・・・たいした練習にもならねーなー・・・!」
そう呟くと、カズコは疾風のごとく、利根川の堤防を駆け登って行った。
河川敷には、さっきまで悠々とモクを吹かしてニコチンを楽しんでいたトラとヤマが、干からびたスルメのように横たわっていたのである。
彼等は、下半身にドッチボールを抱えていたのだが、四個のボールは、それぞれ甲乙つけ難い大きさだったのは言うまでもない。
!!!!!!!!
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス