第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(90)
「利根川大事変」の後、ボックスダンスのプロを自認するハツ君の態度が、何故か急変したのである。
それは、カズコの弟であるロクに対してのものなのだが・・・・・あれほどキモイと言って毛嫌いしておきながら、まるでミケ猫のような声で、接近しはじめたのだ。
「ロクくーん、これ、つまらない物だけど食べてよー・・・これも、つまらない物なんだけどもー・・・どう、どう・・・これもどーだい、つまらない物なんだけどもー・・・!」
「つまらない物」とは、正直屋の廃棄物であるフルーツなのだが、彼は、まさに、「他人のフンドシ」で相撲を取るかのように、それを利用して、プレゼント作戦を開始したのだ。
「本当に、つまんない物なんだけどもー・・・つまんない物で、ごめんねー・・・!」
ロクも最初は戸惑っていたが、彼の強引さに負けて仕方なく受け取るようになった。
「なー、そうだんべ、そうだんべ、うんめーよー・・・食べてよ、食べてよ・・・いやいや、毒なんて入ってないから、ねー、食べてみてよー・・・!」
ロクが変色したパイナップルを食べると、相槌を打つ暇もなく、問いかけてきたのである。
「なー、うんめんべー、うんめんべー・・・フルーツは腐りかけが最高なんだぜー・・・オレなんか、フルーツのプロだかんなー・・・味が判っちゃうんさーねー・・・!」
ボックスダンスのプロは、いつしか、フルーツのプロになっていた。
「ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・・・・オレたちは、友達だよなー・・・仲が良いもんなー・・・大親友だよなーー・・・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・・・・!」
ハツの言葉に、団員たちは一瞬、固まった。
あれほどキモイと言っていた相手に対して、ハツが「大親友」という言葉を使用したのだ。
頭がイカレちまったのか・・・どこから、そんなワードが生まれて来たのだろうか・・・?
「オイ・オイ・・・キミたちは、大親友なのかい・・・?」
チミー隊長が、瞳孔を大きくしながら問いかけた。
「もちろんです・・・オレたち、昔から仲が良かったんすーよー・・・ヒ・ヒ・ヒ・ヒヒ・・・・・そうだよねー、ロクくん、ネー・ネー・ネー・・・!」
ロクは、なんて答えていいものやら、戸惑っていた。
「キ・キ・キ・・・・・隊長・・・ほらほら、ロクくんがテレちゃつてるじゃないですか・・・モー・モー・モー・・・牛だけに、モー・モーモ・ー・・・!」
ハツが、訳のわからないダジャレをカマした。
解説をすると、秘密基地は牛小屋のため、そう言ったらしい。
!!!!!!!!!
やがて、ハツの「タクラミ」が判明することになった。
それは、ロクの姉のカズコに接近するためだったのだ。
「利根川大事変」で、カズコの戦いぶりに感激をして、一瞬で恋をしてしまったのである。
恋しい・恋しい・カズコ様・・・・あーあー・恋しい・恋しい・カズコ様
一日、10時間睡眠を日常とした生活が、5時間睡眠になってしまった。
どうしたら、彼女と交際できるのかと彼なりに考えたのだろう。
思いついたのが、「正直屋の廃棄物フルーツ・プレゼント」作戦だったのだ。
なんとかロクと友達になることに成功したハツは、次のステップに進んで行ったのだ。
!!!!!!!!!
ロクの両親は、彼の物心が付く前には、すでに亡くなっていた。
そのため、幼少の頃の記憶は、ほとんどなかった。
僅かに、姉のカズコと遊んでいたような気がしたが、それも定かではなかった。
カズコは母方の家庭に引き取られ、今は祖母のミコト婆さんと二人で住んでる。
家はイナリ山の外れにあり、見るからに貧乏そうで、ミコト婆さんに入る遺族年金で暮らしていた。
姉とは、一年に1回程度会うだけだったが、不思議と親近感を抱いていた。
この世に、血のつながった兄弟がいるということで、強い絆を感じていたようだ。
口には出さないが、お互いの成長を感じていた。
!!!!!!!!!
そして、いよいよ・・・ロクを先頭に、ハツと私の3人で、カズコの家へと向かったのだ。
ハツの両手には、もちろん「正直屋の廃棄物フルーツ・プレゼント」が、しっかりと握りしめられていたのである。
!!!!!!!!!
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス