第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(94)
突然、ハツが壊れたのである。
「「ポ・ポ・ポ・ポーク、ポーーク、ポーーーク・・・・・!」
「ポ・ポ・ポ・ポーク、ポーーク、ポーーーク・・・・・!」
彼はカズコに向かって、意味不明な言葉を叫び始めたのだ。
しかし、何を伝えたいのか、その言葉の意味は何なのか・・・・・?
皆目、見当がつかなかった。
「ポ・ポ・ポ・ポーク、ポーーク、ポーーーク・・・・・!」
「ポ・ポ・ポ・ポーク、ポーーク、ポーーーク・・・・・!」
やがて、同じ言葉を繰り返すハツに、カズコが怒り出した。
「テメー、こんにゃろめー・・・ポークってブタのことだろう・・・ナメてんじゃねーぞー!わたしはブタか・・・ふざけてんじゃねーぞー、オイ・オイ・オイ・・・・・!」
恫喝されたハツは、くるりと180度回転をして、その場にすわりこんでしまった。
「違います、誤解です・・・誤解なんでーーーす・・・・!」
彼は、体をダンゴ虫のように丸めながら、必死に弁解をしていた。
「何が誤解なんだよー・・・ブツブツ言ってねーで、シャキっと言ってみろー・・・!」
カズコの罵声を浴びながら、ハツはアリのように小さくなっていた。
・・・やがて、意を決したようで、スッと立ち上がり、大声で叫んだのだ。
「ポクと、ポクと結婚をしてください・・・・・!」
意表を突いた告白に、その場の空気は完全に凍り付いたのである。
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・・・30秒ほどの静寂が流れて行った・・・・・・・!
「いいだんべ・・・オメーが本気なら、いいんじゃねーかー・・・!」
ゆっくりと目を開けた先に立っていたのは、顔を赤く染めたミコト婆さんだった。
「そうさなー・・・爺さんが亡くなってから30年も経つからなー・・・嬉しいねー・・・爺さんも許してくれるうんべー・・・ハ・ハ・ハ・・・!結婚の申し込みをされるなんて、夢のようだぜー・・・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・・・!」
最初に、カズコがパチパチと拍手をして、それにロクと私が続いた。
・・・拍手は、しばらくの間、鳴り止まなかったのだ。
カズコが近づいて、ハツとミコト婆さんの手を繋ぎ合わせると、再び、祝福の拍手が沸き起こった。
ミコト婆さんに告白をしてしまったことに、彼は気が付かなかったのだろう。
今、何が起こっているのかと・・・キョロキョロと周囲を見回していた。
「めでたいぞー・・・チューをしろー・・・チューをしろー・・・!」
ロクが、たんとハヤシたてた。
「そうだ、そうだ・・・ここはチューだんべー・・・うらやましいぞー、エロ男・・・一発決めてくれーー、ヒューヒュー・・・二発、三発、百発だーーー・・・メチャクチャに決めろよー・・・今日は、無礼講だぜ・・・シンビレるぜー・・・!」
アドレナリンが体内を駆け巡り、その場は大いにモリ上がったのである。
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何となく、状況を理解したのだろう。
ハツは「ギャー!」と叫んだ瞬間、玄関の戸を突き破って逃走してしまったのだ。
順調に進んで行った幸福の時間が、彼の行動により急に遮断されてしまった。
「あの野郎、恥ずかしがってやがるな・・・!」
「フィアンセを、連れ戻してくる・・・!」
「オレたちに、任せてくんないー・・・!」
婚約者のミコト婆さんとカズコをそこに残して、私とロクはハツを追いかけたのだ。
だが、彼のスピードはカール・ルイスのように凄まじかった。
今、このイナリ山で世界記録が誕生するかもしれないような、激走だったのだ。
堤防を行くハツの姿が、あっという間に消えてしまった。
そうなのだ・・・ハツは、この時の経験により、眠っていた才能に目覚め、短距離走者の道を歩むことになるのだ。
そして、「イナリ山のアキレス」というすばらしい称号を獲得し、モテモテの人生を送るようになるのである。
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来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス