第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(96)
利根川の河川敷には、何やら不穏な空気が漂っていた。
カズコへの告白のため、胸を躍らせながらやって来た三人であったが、土手の繁みからそっと覗きこむと、汚い罵声が聞こえてきたのである。
「おい、あれはトラとヤマじゃねえかー・・・?」
ロクが、興奮しながら、河川敷の中を指差した。
「そんだ・そんだ・・・・・奴らはリベンジに来たんだじゃねーのかー・・・!」
彼らは、一週間前にカズコにボコボコにされてしまったのだ。
「おい、おかしいぜー・・・二人ともよー・・・バケツを持っているぞ・・・何をする気かなー・・・?」
「本当だー・・・変わった、野郎たちだぜー・・・!」
我々は足音を忍ばせ、20メートル手前にある大岩まで近づいた。
再び覗き込むと、カズコを挟み込むように、トラとヤマは顔にタオルを巻いた状態で立っていたのである。
「この前は、遊んでもらってありがとうよー・・・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
「楽しかったぜ、おねえちゃんよー・・・おままごと遊びは、おもしれーよなー・・・!」
二人はアイコンタクトをとりながら、交互に口を動かした。
「今日は、お礼に来たんさねー・・・!」
「いっぱい遊んでもらったかんなー、たっぷりとお返をしねーとなー・・・!」
彼等は、そう言いながら・・・ジリジリと間合いを詰めていった。
「おめーたち、こりねーなー・・・また、来るなんてよー・・・そんなに言うなら練習相手になってやってもいいけどよー・・・!」
カズコが、口を動かした瞬間だった。
トラとヤマが、彼女をめがけて、思いっきりバケツを投げつけたのである。
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周囲は、一瞬で真っ白になってしまった。
バケツの中身は、木を燃やした後の焼却灰だったようだ。
「ゴホン・ゴホン・ゴホン・・・・・おい、ゴホンと言ったら龍丸散じゃねーのかー・・・ゴホン・ゴホン・ゴホン・・・・・!」
煙は、大岩に隠れている我々の元まで届いた。
必死になって、口を押えたが、なかなか我慢ができなかった。
二人が、顔にタオルを巻いていた理由が、今、判明したのだ。
しかし、それは安物のせいだったのだろう。
トラとヤマも、猛烈な勢いで咳き込んでいた。
しばらくの間、ゴホン・ゴホンという音で、その場は騒然としていたのである。
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「おい、あのアマっ子がいねーぞー・・・!」
「どこに、隠れたんだ・・・!」
煙が取れて、状況がいくらか把握できるようになった・・・が・・・そこにいるはずのカズコの姿が、まるでマジックのように消えていたのである。
「チキショー・・・どこに逃げやがった・・・見つけてやるぞー・・・!」
「おい、出てこい・・・かくれてねーで、出てこいやー・・・!」
彼女は危険を察知して、近くの大岩に身を隠したようだった。
トラとヤマは、空気清浄機のように大量の灰を吸い込んでしまい、クシャミとセキをしながらフラついていた。
その時だった。
「よー・よー・よー・・・今が、チャンスじゃねーのかー・・・!」
「何がだよー・・・!」
ハツが、ヨーヨーおじさんのように、ズルそうな顔で言った。
「今が、勝負の時だんべー・・・!」
彼は、久しぶりにハイになっていた。
「だってよー・・・オレたちには、勝てる武器はねーぜー・・・?」
ロクがあきらめ顔で言うと、ハツは自信満々に答えたのだ。
「あるじゃねーかー、これだよ、これー・・・!」
彼は、ニンニンと言いながら、両手を合わせたのだ。
「それって、手カンチョーかー・・・チミー隊長の、門外不出のワザだぜー・・・!」
私が問いかけると、ハツは自信満々に答えたのである。
「ヨー・ヨー・ヨー・・・たっぷり練習したんべなー・・・今こそ、この術を実戦で使う時だぜー・・・!」
ニャリと笑った瞬間、彼の顔は妖怪のように怪しくなって行った。
「オレの指が、オレの指がよー・・・寂しがっているんさー・・・早く、暴れたくてよー、爆発してんだってよー・・・キョ・キョ・キョ・キョ・キョ・・・!」
彼は、完全にイッていた。
とうとう、テッペンを突き抜けてしまったのだ。
ハツはスッと立ち上がると、躊躇することもなく、トラとヤマに近づいて行ったのである。
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来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
☆バンビー
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス