第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(105)
「てめー、この野郎、いい加減にしろー・・・何度も人の後をつけやがってー・・・これで何回目だ・・・こりねー奴だー・・・締め上げてやるぞー・・・!」
「誤解です、誤解です・・・誤解なんですー・・・!」
「何を言ってるんだー・・・5階も6階もあるかー・・・この変態野郎めー・・・!」
相変わらず、ハツはカズコの後を追跡していたが、ブクロのニューロマンと書いてある四つ角を曲がると、超魔術のように姿を消していた。
そして、気が付いた時にはバックを取られ、スリーパーホールドからコプラツイストへ、・・・四の字固めから卍固めへ・・・最後は、ロメロスペシャルをガッツリと決められ、体がバラバラになった瞬間、気を失っていた。
最初は苦痛に思ったが、水が流れるような技のオンパレードに、何故か快感を覚えるようになっていた。
それは、ハツにとって初恋の人でもあるカズコと、どんな形であれ、時間を共有できることが喜びでもあった。
「話せば解ります、話せば解ります・・・話をさせて下さい・・・!」
必死の形相で「三角締め」を外そうともがいていると、急に体が反転し・・・その瞬間、カズコの胸をワシ掴みにしてしまった。
「この助平野郎ー、やってくれたなー・・・それが目的だったんだなー・・・ハハーン・・・正体が解ったぜー・・・この、変態助平野郎めー・・・!」
「いや、これはほんの手違いで、偶然なんですー、偶然なんですよー・・・!」
「何が偶然だー、最初からそれが目的だったんだろー・・・このチョー変態仮面めー・・・!」
怒りがマックスに達したカズコは、ハツの哀願を無視して、2メートルもある反対側の壁に駆け上がり、フライングボディーアタックをかましたのだ。
一瞬、心臓が止ったハツは、路上で失禁しながらも、しっかりと彼女を感じながら、夢の世界へと飛び込んでいたのである。
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カズコの消えたニューロマンの先には、はたして何があるのか・・・
・・・たんと興味が湧いてきた。
ハツは意を決っして、居酒屋のバイト帰りに、探検をしてみることにしたのである。
幼いころに、少年ホースの仲間といっしょに、利根川の秘密基地に向かつた時のことを思い出して、久しぶりに胸がドキドキした。
恐る恐る中へ入っていくと、ストリ-トは道幅が2メートル程で、両脇には所狭しと木造の家屋が立ち並び、まるで戦前のような風景がそこにあった。
時刻は深夜を過ぎていたためか、人の気配はあまり感じなかったが、時折、どこからか酔っ払いのワメキ声と犬の遠吠えが聞こえてきた。
黄泉の国に迷い込んだような、不思議な空間であった。
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ストリートを50メートルほど歩いた所に、へたくそな字で書かれた看板が2台あった。
そこには「女子専科ニューロマン」と、少し離れた所に「男子専科ニューブクロ」とあり見るからに怪しい物件のように思われた。
後者には、「空部屋あり、格安物件、24時間対応」というビラが貼ってあり、入居者を募集しているようだった。
ハツは少し躊躇していたが、体が何かに引っ張られるかのように、ニューブクロへと足が動いていた。
・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・どんな空部屋なんだろうか、見学をしてんべー
・・・もしかして、もしかして、もしかして・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!!
淡い期待を胸に・・・彼は、ゆっくりと、そして大胆に、そしてコソコソと・・・ニューブクロ荘の入口に立ったのである。
すると突然、頭の上から人の声が聞こえてきたのだ。
「♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪
♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪
ようこそ、選ばれし者よ、君はラッキーマンだ、残り一つの部屋を見事にゲットした。
部屋代は、月一万円なり・・・特典として10パーセント引きだ・・・
今日から、このゴージャスルームは君のもの・・・
若者よ、胸を張れ・・・そして、ニューブクロから世界へ羽ばたくのだ・・・
運命の扉は開かれた・・・ニューブクロは、君を歓迎する・・・
正直者よ、他の者に横取りされないうちに、申込書にサインをするのだー・・・!
♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪
♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪」
催眠術にでもかかったかのだろうか・・・ハツの右手は何者かに操られるかのようにゼブラのボールペンをしっかりと握りしめ、入居申込書にスラスラとサインをしてしまったのである。
「♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪
♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪」
おめでとう、おめでとう・・・今日からゴージャスルームは君のものだ・・・
高倍率を勝ち抜いた勇者よ、ニューブクロ荘は、君を大歓迎するぞー・・・・
♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪
♪ ジャジャジャジャーン、ジャジャジャジャーン ♪」
不可思議な空間に迷い込んでしまったハツは、朝日が昇るまで夢の中で迷子になっていた。
明日から始まるであろうバラ色の生活を、たんと思い描いていたのである。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
☆バンビー
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【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス