第２章　アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想（２）
記憶とはいったい、どんなものなのだろうか。
ウィキペディアによると、ものごとを忘れずに「覚えていること。」「覚えておくこと。」と書いてある。
我々は何気ない日常の生活の中で、沢山の記憶と忘却を繰り返しながら生きている。
楽しいことは胸に残り、嫌なことはいつしか忘れ去っていく。
このことは、人間が生きていくための、必要十分条件であろう。
ところで、記憶についてあらためて考えてみると、色々な種類があるように思える。
まず、目・耳・鼻・舌・皮膚の五官による、見る・聞く・書く・味わう・触れることによる記憶だ。
年を重ねた時、ふと味わったＢ級グルメに懐かしさを感じたことはないだろうか。
場末の喫茶店で偶然に耳にしたニューミュージックに、涙したことはないだろうか。
はたまた、偶然目にした景色に、まるでデジャビューみたいな感覚に陥ったことはないだろうか。
たのしい追憶は人の心を癒し、明日への活力を与えてくれる。
しかし、どうなのだろうか。
記憶というものは、いつしか自分勝手に作り替えられていることはないだろうか。
たとえば、何十年ぶりかに再会した友人がいる。
お互いに、たのしい時間を共有したはずなのに、二人の記憶が微妙にズレていたこと。
はたまた、パソコンのメモリーが、指先でさわっただけで一瞬のうちに消去されてしまうかのような、記憶のある部分が欠如してしまったと感じたことはないだろうか。
思い出そうとしても、どうしても思い出せない。
やがて、そんな記憶はなかったのだろうと諦める。
そうなのだ。
記憶とは、実に曖昧なものなのだ。
その曖昧さゆえに、我々人間は生きていけるのだ。
！！！！！！！！
「グ・グ・グ・グ・グワーン・グワーン・・・・グンマちゃーん・ちゃんカワイー！！！」
板塀にめり込んだ頭をやっとのこと引き抜いた私は、その場の光景に、ただただ唖然とするばかりであった。
強烈な青い光に包まれた球体は、ゆらゆらと上空を漂い、やがて、わかくさ保育園の初恋桜の前に着陸したのだ。
上空では球体は確か5個が存在していたはずなのだが、そこには青と桃色と黄色の3個しかなかった。
「フム・フム・・・・・ネコふむじゃったー・・・ナンダ・カンダ・ナンダ・カンダ・・・カンダの生まれかーい・・・んにゃ・・・イナリ山の生まれだんべ・・・？」
謎を解こうとしても、いったいどうなっているのか、かいもく見当がつかなかった。
こんな奇妙な物体は、今まで見たことがなかったからだ。
それに、重力を無視したような軌跡は、ニュートン力学ではとても説明がつかなかった。
思想錯誤を繰り返しながら、アーモンドの木の下でたたずんでいると、桃色と黄色の球体の中心が開き、そこから人影らしき物が出てくるのが見えた。
上弦の月のあかりに照らされて、二つの影法師は弱々しかった。
「ニャ・ニャ・・・・・ニャンダ・カンダ・ニャンダ・カンダ・・・・カンダの生まれだんべか・・・んにゃ・・・やっぱ・イナリ山のうまれだんべ・・・カメさーん・・・・？」
外に出た二つの人影はヨロヨロと歩み寄り、互いに手を繫いだところで、バタリと前に倒れたのだ。
「・・・・・あ・ｈ・く・ｓ・1・2・5・8・・・・！」
静寂の中で、かすかに意味不明な声が聞こえような気がしたが、聞き取ることはできなかった。
「ニャ・ニャ・・・・・ニャンダ・カンダ・ニャンダ・カンダ・・・・カンダの生まれだんべか・・・んにゃ・・・やっぱ・イナリ山のうまれだんべ・・・ツルさーん・・・・？」
その時だった。
今度は、青の球体の中心部が開いたのだ。
そして、一つの人影が外に出てきた。
影は、さっきの二つの影に歩み寄り、しばらく思案しているようだった。
やがて、ためらうかのように、ゆっくりと両手の指先を二人の脳天に向へ、照準をピタリとロックした。
それは機械的な、じつに計算された動きのように見えた。
「ニャ・ニャ・・・・・ニャンダ・カンダ・ニャンダ・カンダ・・・・カンダの生まれだんべか・・・んにゃ・・・やっぱ・イナリ山のうまれだんべ・・・ツルカメさーん・・・・？」
数秒後、指先がピカリと青く光かったのだ。
「ワオー・・・ワオー・・・ワオーンと言ったら龍丸散・・・？」
驚きのあまり、私は大声を上げてしまった。
そして，またしても失禁してしまったのだ。
スボンがビショビショに濡れて、とても気持ちが悪かった。
！！！！！！！！
ところが、どうだ・・・・・・突然、その影が、こちらに振り向いたのだ。
「しまった・・・見つかってしまった・・・・・・ウエーン・ウエーン・ウエンツ栄一・・？」
大声で泣いても、許してくれそうもなかった。
・・・・・・大変な場面を目撃してしまったようだ。
そして・・・・・影が、少しずつ私に近づいてきたのだ。
「あ・わ・わ・わ・・・・・や・や・や・や・・・・ヤーレン・ソーラン・ソーラン・ソーラン・ソーラン・ハイ・ハイ・・・・・ハイ・ハイ・しちゃうゾー、ゾーさーん・・・？」
距離にして3メートル・・・・・その影の輪郭、顔だちが、Ｏ－レンズ越しに、はっきりと見えた。
私は無意識のうちに、メモリー・スクリーンにタッチした。
「あ・あ・あ・あ・・・・あんころもちが食べたーい！」
完全に、メモリーに記憶された瞬間・・・・・残念ながら失神してしまったのだ。
上空には、伊勢崎市の花火大会を告げる最初の花火がド・ド・ド・ドッカーンと、華麗に打ち上げられていた。
来月号に、つ・づ・く・・・♪♪♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス