第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(3)
虚数という数がある。
-1に√を付けた数だ。√-1をiで表すのだが、iを2乗すると、-1になる。
今度は、A=B+Ci・・・・この数は、複素数と呼ばれている。
なんとも不思議な数であるが、虚数、複素数の世界が存在するとしたら、どのようなものなのだろうか。
たとえば、水の分子である。
気体、液体、固体と変化する。
その境界線はどうなっているのだろうか。
氷は解けて水になり、水は蒸気となって気体になる。
たしかに水は0度で凝固するのだが、不思議なことに過冷却状態では凍らない。
ところが、外部から衝撃をうけると、瞬間的に凝固してしまう。
そんな、過冷却状態みたいな世界が、いくつも存在するとしたらどうだろうか。
人類の存在など、宇宙の歴史から見れば、ほんの一瞬だろう。
生まれては消える、「うたかた」のようなものだ。
実は、我々の世界が虚数で、実数の世界が他にあるかもしれない。
さて、二つの世界が、複素数として交差しているとしたらどうだろうか?
・・・・・・・・・そうなのだ。
宇宙は広大で、ファンタスチックなものなのだ。
人智を超えた世界があったとしても、不思議ではないだろう。
!!!!!!!!!!
「コケコッコー!・・・コケコッコー!・・・コケマクリー!」
ぼんやりとした意識の中で、一番鶏の声がダブルで聞こえた。
あれは確か・・・・・カメさんが夜店で買ったペアーのニワトリの声だ。
成長するにしたがい赤いトサカが目立つようになり、結局、両方がオスだと判明したものだ。
頑固なカメさんは、この事実をなかなか認めようとしなかった。
「こいつらは、ビューティーペアーだ・・・・・最強だー、最強だー!」
何が最強なのか意味不明だったが、彼は声を大にして言い続けていた。
が、天敵のツルさんに、ビューティーペアーを毎日のようにからかわれていた。
「・・・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・このトリは、オネーじゃねーだんべか・・・・・・・どっちが、女役だんべ?・・・・・・やっぱし、順番だんべなー、ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョーン・・・・・!」
「うるせー、ツル公・・・・・・さっさと、赤城山へ飛んで行けー!」
「コケコッコーって鳴いているんべな・・・・・いつまでたったって、卵は産まねーぞー・・・・・待ってねーで、正直屋で買った方が早えーだんべがな・・・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョーン・・・・・!!」
そして会話はさらにヒートアップしながら、いつも振り出しに戻ってしまう。
「こいついらは、ビューティーペアーだ・・・・最強だー、最強だー!」
「・・・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・・このトリはオネーじゃねーだんべか・・・・・・・どっちが、女役だんべ?・・・・・・・やっぱし、順番だんべなー、ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョーン・・・・・!」
「うるせー、ツル公・・・・・・さっさと、赤城山へ飛んで行けー!」
「コケケッコーって鳴いているんべな・・・・・いつまでたったって、卵は産まねーぞー・・・・・待ってねーで、正直屋で買った方が早えーだんべがな・・・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョーン・・・・・!!」
飽きもせずに、同じ会話が延々と繰り返されるのだ。
誰かが間に入らない限り、まるで同じCDを聞くかのように、くだらない会話はリピートされ続けた。
!!!!!!!!
「あー・・・・死んでいる、人間が死んでいるダンス・・・!」
漠然とした意識のなかで、誰かが遠くで叫んでいるのが聞こえた。
「キナサお姉様・・・老人がくたばっているみたいダンス・・・・かわいそうダンス!」
誰かが、体をつっついているような・・・・・・私は、すぐ近くに人の気配を感じた。
その時、その声に反応して、麻痺していた副交感神経が、ピクリと動きだした。
わたしは、何とか手足を動かしてみたのだ。
「キナサお姉様・・・・ピクピクしているダンス・・・すんごいダンス・・・・老人が生き返ったダンス・・・・奇跡ダンス・・・なかなか、しぶといダンスにゃー・・・・!」
目を開けると、見知らぬ誰かが私をマジマジと見つめていた。
「キナサお姉様、キナサお姉様・・・・・・ハゲ頭が、目をさましたダンスよー・・・!」
勘に障るその言葉に、私は思わず反応してしまった。
「何がハゲ頭じゃー・・・・・この・この、コンニャロー・・・ロー麺・ロー麺・ロー麺・・・・!」
「ウヒョー・・・元気な、ハゲ頭ダンス・・・一発、おみまいするダンス・・・・ゴーン!」
瞬間、目から大量の火の粉が出た。
「イテテ・イテテ・イテテーヨ・・・・お星さまが,たんと飛んでまーす!!」
そして、そのまま・・・・・私は不覚にも、意識を失ってしまった。
「キナサお姉様・・・また、くたばってしまったダンスよ・・・ハゲ頭、しっかりするダンス・・・・ゴン・ゴン・ゴーン!!」
火の粉は、しばらくの間、消えることはなかった。
来月号に、つ・づ・く・・・♪♪♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス