第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(8)
下仁田町の南に、大崩山という小さな山がある。
標高467メートル程の円錐形の山なのだが、別名「根なし山」と呼ばれている。
その名のとおり、どこからか横すべり移動してやって来たのだそうだ。
地質を調査したところ断層があり、あきらかに上下で異なっていることが判明している。
そうなると、はたして、故郷はどこなのか・・・・・・・?
周辺の山々を調査したのだが、痕跡すらつかめず、いまだに不明なのだそうだ。
まさに、ナゾである。
あたかも手足がはえているかのように、チョコチョコと歩いてきて、そこにとどまったかのようだ。
円錐の体積を求める公式は、底辺×高さ×1/3であるから、底辺の半径を約3キロメートルとすると、高さが467メートルなので、体積は約4キロ立方メートルとなる。
これだけの膨大な量が、はたして移動できるものなのだろうか。
胴体をちょん切って運んだとしても、空中でも飛ばない限り、不可能であろう。
無理やり移動したとしても、底が引き千切られて、山としての原形をとどめないであろう。
それならば、地中の奥深くから出現したのだろうか。
これも違う。
何故なら、このエリアは火山地帯ではない。
ならば、「根なし山」の故郷は、いったいどこなのだろうか。
・・・・・下仁田町には、他にも川井山、ふじ山,御岳など、緑色片岩に乗った「根なし山」が存在する。
そして、ふじ山と川井山の頂上には石英閃緑岩が露出しているのだ。
だから、これと同じ岩石を発見できれば、故郷を見つけることが可能になるわけだ。
調査の結果、下仁田町から50キロメートル離れた埼玉県の小川町に、金勝山石英閃緑岩が広く分布されていることが判明したそうである。
両者は、とてもよく似ているようで、下仁田町の「根なし山」は、ここが故郷かもしれないと思われた。
・・・・・が、調査の結果、ここも同じ「根なし山」ということが解った。
両者は兄弟のようで、太古の昔に、どこか遠い故郷を後にしたのだろう・・・・・?
計り知れない時の流れの中で、大地はまるで生き物のように活動していたのだ。
!!!!!!!
三番目の少女は、ある日突然、私の目の前に姿を現わした。
セピア色に輝く秋の日、わかくさ保育園の初恋桜の下で紅葉を眺めながら、ブルーマウンテンの香りを楽しんでいる時だった。
最初のコーヒーを一口ふくんだ時・・・・・一瞬、初恋桜の枝がざわめき、枯葉がパラパラと落ちてきたのだ。
何気なく見上げると、上空に何やら飛行物体らしきものを発見した。
それは波のようにユラユラと漂っていたが・・・・・突然、ジグザグに動き出し・・・と思ったら・・・・・音もなく、停止したのだ。
・・・・しばらくの間、静止状態が続き・・・・・やがて、円を描き始めた。
・・・何かを連想させるかのように、飛行物体は、次第に加速を始めた。
クルクルクルクルと回り、まるでトンボを捕まえるときのように、スピードアップをしては停止して、それを何度か繰り返したのだ。
おかげで、頭の中には渦状の残像だけが残った。
そして、残像は曖昧になり、とうとう目では追えなくなった・・・と、思った瞬間、私の記憶が、いきなり飛んでしまったのだ。
かすかに、ブルーマウンテンの苦い香りが頭の中を過ぎった。
!!!!!!!!!
脳の停止は、せいぜい30秒間くらいだったろう。
ゆっくりと目を開けると、霞んだ先に黒い翼竜に乗った少女がいた。
おかっぱ頭で、ゴールドのジャンプスーツを着用し、右手に1メートル程の金色のムチを持っていたのだ。
今時、こんなファツションは異様な感じがしたのだが、・・・・・その光景は、まるで、アリスの世界に迷い込んでしまったかのような・・・とても不思議な感覚だった。
「おいハゲ頭、〇▽&$#」(“!・・・・・・・?」
少女は、何か、しきりに叫んでいるようだったが、早口のために聞き取れなかった。
「・・・・・〇▽&$#」(“!・・・・・!)
やがて、ペリカンのように長い口ばしの翼竜に向かって、ミステリアスな呪文をなげかけた。
「〇▽&$#」(“!〇▽&$#」(“!・・・!!!)
すると、キバの間からニュルニュルとした長い赤舌が出てきて、私の頭をペロペロとナメ回しはじめたのだ。
「こらハゲ頭、〇▽&$#」(“!・・〇▽&$#」(“!・・・・・?」
おかっぱ頭は、言葉が伝わらないことに腹を立てているようだったが、私は前頭葉が緩んでしまい、口をポカンと開けて、だだ、されるがままに立ち尽くすだけだった。
翼竜の舌は、ウシの舌のようにザラザラとしていて、たんと気持ちが悪かった。
「〇▽&$#」(“!・・おいハゲ頭・・〇▽&$#」(“!・こらハゲ頭・・〇▽&$#」(“!?」
何も反応しない私に対して、おかっぱ頭は、だんだんとエキサイトしてきたようだが、その姿は腹話術のケンちゃんが早口でパクパクしているようにしか見えなかった。
そして、とうとう堪忍袋の緒が切れたというのだろうか・・・いきなり、金色のムチを振り上げた。
ムチはクネクネと天空に伸びて・・・・・やがて、私を目がけて一気に急降下してきたのだ。
アブナイ!・・・・間一発で右に外したかと思ったが、甘かった。
ムチはUターンをして、すごいスピードで私の頭にからんできたのだ。
「〇▽&$#」(“!・〇▽&$#」(“!・・・カーン・・・・?」
おかっぱ頭が、大声で叫んだ。
私は、なんとか外そうともがいてみたのたが、金色のムチは微動だにしなかったのだ。
キリキリと脳ミソを締め付け、強烈な痛みで意識が飛びそうになった。
「〇▽&$#」(“!・〇▽&$#」(“!・・・・ドッカーン・・・?」
・・・・・・・・・・・数秒後、ものすごい電気が流れ、大きな火花が全身を覆い、金ピカに光った。
あたかも、落雷に打たれたかのような衝撃で、全身の体毛から空中放電が起こった。
強烈な電気ショックを受けて、私は、またしても失神してしまったのだ。
来月号に、つ・づ・く・・・♪♪♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス