第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(18)
「少年ホース」とは、秘密基地に集まる仲間のことで、4年生のハツ、タケ、トラオ、クメ、私、と、6年生のジミー隊長からなっていた。
基地は、リーダーでもある隊長の家の牛小屋で、グループの命名者は彼だった。
牛小屋なのに何故ホースなのかと納得がいかなかったが、これは、彼の勉強不足によるものであった。
英語教室に通い始めた隊長は、馬と牛を混同して「デソ・イス・ア・ホース・・・デソ・イス・ア・ホース」と、正直屋の和牛を指差しては得意毛に発音をしていたのだ。
が、残念なことに、隊長の滑舌の悪さは相変わらずで、英語になってもイズをイスと発音していた。
インターナショナルなグループを目指して、強制的に英語指導を受けた隊員たちではあったが、結果的には全員が「デソ・イス・ア・ホース!・・・デソ・イス・ア・ホース!」と、発音するようになってしまった。
「いいか、英語には複数形というのがあるんだぜ・・・牛がいっぱいいたらホウシイスって言うんだ・・・オレって、頭がいいだんべー、良すぎるよなー・・・ウヒョ・ウヒョ・ウヒョ・・・ホウシイス・だんべー・・・!」
こんな時は、決まってタケが持ち上げるのだ。
「隊長は、鼻が高いからイギリス人じゃねえのか-・・・!」
私も調子こいて、彼を持ち上げるのだ。
「隊長は、アゴがズナイからアメリカ人じゃねーのかー・・・!」
この言葉に、彼は思いっきり感激しまくり、いつもの口癖をつぶやくのだ。
「オレって、毎日、英語で夢を見るんさー・・・やっぱり、イギリス人なんかなー、いや、アメリカ人なんかなー・・・ほんと、悩むぜー・・・デソ・イス・ア・ホース!」
だが、ここで、止めないのがタケのすごいところだった。
ジミー隊長の自尊心を思いっきりくすぐるように、たたみかけるのだ。
「そうだんべー、そうだんべー・・・やっぱり、隊長は鼻が高いからイギリス人だんべー・・・!」
私も調子こいて、彼を持ち上げるのだ。
「そりゃー、決まってるんべー・・・隊長は、アゴがズナイから、やっぱりアメリカ人だんべー!」
このダメ押しで、彼の自信は盤石なものとなり、自分は外国人だとすっかり勘違いしてしまうのだ。
「オレって、毎日、英語で夢を見るんさー・・・やっぱり、イギリス人なんかなー、いや、アメリカ人なんかなー・・・ほんと、悩むぜー・・・デソ・イス・ア・ホース・・・ク・ク・ク・ク・・・クク81・ママ72!」
だが、ひとつも悩む必要はなかった。
どこから見ても、彼は純粋な日本人だった。
外国人ぽいところは、一つも見当たらなかったからだ。
何も知らない隊員たちに熱血指導をしている間、ジミー隊長は自画自賛を繰り返しながら、至福の時間を味わっていた。
しかし、複数形になっても「ズ」が「ス」になってしまい、滑舌の悪さは相変わらずだった。
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ところで、少年ホースの仲間たちは、友情を深めるために集まったのではない。
単に、正直屋のフルーツにつられただけで・・・・・ようするに、たんと食い意地の張った奴等ばかりだったのだ。
だから、彼等の協力を得るには、食糧を提供することが一番の早道だった。
まして、「フルーツをプレゼントするぞ!」と言えば、あの金メダリストのカールルイスより素早く集合することに、間違いなしだった。
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隊長からもらったタイワンバナナの房には、なんと11本ものバナナが付いていた。
私は、隊員のハツ、タケ、トラオ、クメが到着する前に、ちょうど5人で割り切れるようにと、1本を腹の中に納めて、10本にしておいたのだ。
ゆっくりと味わってみると、口の中でふわりと溶け、食感がたんと優しかった・・・・・
こ・こ・こ・これは・・・・・じつに糖度の高い上等品だ・・・!
いつも、賞味期限の切れた廃物ばかりたべていたので、いたく感動したのだ。
しかし、じっとバナナを見ていると、おなかの虫がグーグーと泣きだし、「もっとくれー・もっとくれー」と、しきりに騒ぎ始めたのだ。
私は、それを治めるために、不本意ではあるが、1本また1本と口に運んでしまった。
まさに、ト・レ・ビ・ア-ン・・・・・世の中には、なんと品の良い糖質があるものだろうか・・・私の大脳皮質は、ラン・ラン・ラン・と、雲の上をスキップして、超ゴキゲンになった。
結局、5本だけしか残らなかったのだが、各人平等に1本ずつ分けることができたので、これはこれで、めでたし・めでたし、だったと思う。
来月号「に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
☆バンビー。 
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス