第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(19)
ジミー隊長との約束の時間は、小唄に5時であった。
小唄とは、以前、カメ師匠と正直屋の社長である権さんがマツタケ騒動を仕掛けた赤松林のことだ。
「岡本本家の清酒キンカメ」を、しこたま飲んだカメ師匠が、権さんからもらった外国産のマツタケを、勢いで小唄に植えておいたのだ。
それを元教頭のツル先生が発見をしたものだから、イナリ山では大騒ぎになった。
世紀の大発見をした先生は、早とちりをして、村の長たちに「マツタケで村おこしをしよう!」と、ぶち上げたのだ。
イナリ山区長を筆頭に、副区長、民生委員、隣保班長、体育健康推進委員,老人会、婦人会、若妻会、等々,諸々の役員が集落センターに集まり、「イナリ山の集い」が盛大に開催された。
もちろん、リーダー役は元教頭のツル先生が務めた。
「ご当地キャラをウメコさんに作ってもらおう!・・・B級グルメをシンミセにお願いしよう!・・・アイドルはカメさんだと変だから、モモコさんだんべー・・・やっぱりイナリ山みやげは正直屋にたのもう!・・・いんや、あそこは悪徳屋だから止めておこう!」
様々な案が飛び出して、早々に、担当者が決まった。
中にはフライングをして、早くも発注したものもあった。
が・・・・「イナリ山の集い」は、おおいに盛り上がったのだが、その後、何故か、マツタケは1本も発見されることはなかった。
老人会まで出動して必死にさがしたのだが、2本目はどこにもなかったのだ。
やがて、非難の矛先は、ツル先生に向けられ、彼は、いつしかホラ吹き先生になってしまったのだ。
ホラ吹き先生は、どこへ行っても笑い者扱いにされて「先生、マツタケは見つかったかーい、見つけたら、オレにも教えてくんないねー・・・ク・ク・ク・ク・・・クク81・ママ72だんべー!」と言われた。
あげくの果てには、「先生は、自分の物と間違えたんじゃねーだんべかー・・・・・先生は、いつもりっぱなモンをぶら下げているかんねー・・・ク・ク・ク・ク・・・クク81・ママ72だんべ-!」
そして、ツル先生は最後にはマツタケ先生と呼ばれるようになってしまった。
「オレは、マツタケなんかぶら下げていねーぞー、オレはマツタケなんかぶら下げていねーぞー・・・あれは、世紀の大発見だったんだー!!」
そう言って、マツタケ先生は今日も小唄でマツタケ探しをしているのだ。
結局のところ、一番喜んだのは、宿敵のカメ師匠と、これを勝機ととらえて外国産のマツタケを売りまくった正直屋の権さんだけだった。
二人は勝利の美酒「岡本本家の清酒キンカメ」を飲みまくり、八木節音頭を激しく踊りまくっていた。
!!!!!!
一方、少年ホースの隊員たちである、ハツ、タケ、トラオ、クメは、上質のフルーツプレゼントの吉報を受けて、金メダリストのカールルイスなみの速さで、秘密基地に集合したのだ。
そして、1本の大事なタイワンバナナを、ゆっくりと味わい尽くした。
全員が、バナナの内側の白い部分まで、ていねいにかじって味覚を堪能したのだ。
「うんめーなー、うんめーなー…これは、たんと上等品だなー・・・!」
タケが、思わず叫んだ。
その時、私が捨てたバナナの皮をハツが見つけたのだ。
「おー、もつたいねー、もったいねー、こんなところにバナナの皮があるぞー!」
拾うと同時に、内側の白い部分をかじりはじめた。
「うんめーなー、うんめーなー、極楽だぜー!」
そうこうしているうちに、秘密基地のオンボロ時計は、4時50分を指していた。
今頃は、ジミー隊長が小唄で首を長くして待っているころだろう。
いそげ、少年ホースよ! バナナのご恩に報いるために、疾風のごとく小唄へ向かうのだ。
だが・・・・・夏の暑さのためか、足取りは重く、タイワンバナナ1本では、すぐにガス欠になってしまった。
全員、日よけ代わりにバナナの皮を頭に載せて、だらだらと歩きだす頃には、時計の針は、夕方の5時を回っていたのだ。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
☆バンビー。
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス