第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(20)
「ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
小唄に到着すると、広場の方から豪快な笑い声が聞こえてきた。
あれは、まぎれもない・・・・・ジミー隊長の、1オクターブも高い声だった。
我々は、物音を立てないように細心の注意をはらって、赤松の大木に身を隠しながら、状況を見守ることにしたのだ。
「小次郎、破れたりー・・・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
どうやら、隊長は、巌流島の決闘をイメージして、武蔵になりきっているようだった。
それは、桑の枝を2本、刀の代わりに腰のバンドにさしている姿からして容易に想像ができることであった。
「おめーらみてーなお坊ちゃんたちに、わざわざボクがお相手をするほどのことでもないんだがねー・・・光栄に思ってくれたまヘよー、お坊ちゃんたちよー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
お坊ちゃんは、どう見てもジミー隊長の方だった。
なんせ、栄養の行き届いた体は、小学校6年生にしてすでに80㎏の大台にのり、母親のカネコさんからたんと溺愛されて、高カロリー食を満喫していたからだ。
「おめーら、ボクのお友達のタカ君にちょっかいを出しているそうじゃん・・・タカ君は、ボクの大事な親友なんすよー・・・今なら「ゴメンね!」と、一こと言えば許してやるけんどねー・・・どうする、どうする、お坊ちゃんたちよー・・・ボクは、気が短いんだよねー、お坊ちゃんたちよー・・・・・!」
やはり、お坊ちゃんは隊長の方のような気がした。
「・・・・ン・・・・・・・・・ン・・・・・?」
イシとギューはニヤニヤしながら、黙って見ているだけだった。
「・・・・・おかしいなー、聞こえないんかなー、お坊ちゃんたちよー・・・・・本当に、ボクは、気が短いんですよー・・・いんですか、お坊ちゃんたちよー・・・・・!」
何度も言うが、絶対にお坊ちゃんは隊長の方だった。
それに、気が短いというわりには、どうも緊張感が足りないように思えた。
・・・・・・沈黙の中、隊長が両手を広げて、あきれたようなジェスチャーをして、座り込んだ・・・涅槃大仏のように横たわって、余裕を見せたのだ。
頭をパンチパーマにすれば、本物の涅槃大仏に見えた。
その時だった・・・イシがいきなり,石を投げつけたのだ。
ゴツンという音がして、もののみごとに隊長の眉間に命中した。
隊長が、そこに手を当てると、鮮血がタラリと落ちてきたのだ。
手のひらを見た途端、「ギャー」という絶叫とともに、後方へひっくり返って失神をしてしまった。
すかさず、ギュウーが走り出して隊長の顔面を「ギュウー!」っと、全体重を乗せて踏みつけたのだ。
そして、イシが追い打ちをかけるように地面にある大量の小石を顔面に掛けたのだ。
すばらしい、チームワークだった。
相手の一瞬の隙をついた、パーフェクトの攻撃・・・まさに秒殺だった。
もし彼等が、正直屋のリングにあがっていたならば、イナリ山ジュニアヘビー級タッグチャンピョンのベルトを腰に巻いていたかも知れない。
隊長は、バタバタと体を動かしながら「このブタ野郎め、ひきょうだぞ・・・このブタ野郎め、ひきょうだぞ・・・!」と、小声で叫ぶのがやっとだった。
しかし、何とか叫んでみたものの、ブタ野郎は砂まみれになった隊長の方だった。
その間も、ギュウーは隊長の顔面をギュウーと踏んだまま動かなかった。
「このブタ野郎め、ひきょうだぞ・・・・このブタ野郎め、ひきょうだぞ・・・!」
どんなに叫んでも、ブタ野郎は、砂まみれになった隊長の方だった。
イシが、隊長の腰にさしてあった桑の枝を強引に抜き取り、ムチの代わりにビシバシと叩き始めたのだ。
ギュウーの踏みつけとイシのムチ打ち、生板のコイのようにバタバタと暴れる隊長の姿はしばらく続き、・・・・・それはまさに、S&Mショーのような、異様な光景であったのだ。
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来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
☆バンビー。
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス