第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(21)
「きったねーやつらだ・・・・・ゆるせねー・・・・・石を投げるなんて、きったねーぞー・きったねーぞー・・・!」
赤松の大木の陰で、静かに傍観していたタケが、何やら低音でぶつぶつとつぶやいた。
まるで流行歌手のフランク永井のような、心の底からしびれるような声だった。
「きったねーやつらだ・・・・・ゆるせねー・・・・・石を投げるなんて、きったねーぞー・きったねーぞー・・・!」
タケの怒りが、徐々に高まって行くのが、肌で感じられた。
「きったねーやつらだ・・・・・ゆるせねー・・・・・石を投げるなんて、きたっねーぞー・きったねーぞー・・・!」
タケは、よっぽど汚かったのか、不潔だったのか、それとも腹がたったのか、同じ言葉を三回もくりかえし・・・・・おもむろに、赤松の根元にあった小石を2個、両手でつかんだのだ。
そして、限界まで体を横にヒネり、あの野茂投手のようなトルネード投法で石を投げつけたのだ。
石はスパイラル曲線を描きながら、真一文字に飛んで行き、ゴツンという鈍い音がした・・・やがて、ギュウーがギュウーと言いながら頭を抱えて、ひざまずいたのだ。
・・・・・同じく、トルネード投法で、第二球を投げつけた。
すると、今度はコーンという違う音色がして、イシが頭をかかえながら地面にうずくまったのだ。
イシは、意志の固い奴だと思ったが、案外、あっさりと倒れてしまった。
「石を投げるなんて、きったねーぞー・・・」と、三度も言っていたタケだが、同じように石を投げたのには、たんと驚いた。
もっとも、投球は、彼の得意分野だった。
そう・・・あれは、七色の魔球・・・・・相手を幻惑する、必殺のフォークボールだ・・・・!
タケの強肩は仲間内でも有名で、たくさんの兄弟の飢えをしのぐために、スズメを石で撃ち落としては、焼き鳥として提供していたのだ。
彼は、兄弟にとって親以上の存在であり、命の糧であった。
だが、普段は温厚なタケ君であるが、爆発すると、手がつけられなかった。
とうとう・・・・・・とうとう・・・怒りの導火線に火がついてしまったのだ。
タケはポケットから赤い毛糸のパンツを取出し、おもむろに頭からすっぽりとかぶったのだ。
そして・・・ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・両手で,円を描きながら、必殺のポーズを決めたのだ。
「カ・カ・カ・カ・カ・キクケコーーーーー・・・・レッドパンサー・サード・・・超変体ーーーー・・・・パッキーーーーーン・パキ・パキ・パキ・パッキーーーーン・・・カ・キ・ク・ケ・コーーーコケケッコーーーーー・・・・隣の客は、よくカキ食う客だー、となりの客は、よくカキ食うく客だーーーーー・・・パートⅢ・・・・・・!」
今まさに、心優しきタケ君が、レッドパンサー・サードに超変体したのだ。
がんばれタケ君、キミは希望の星、イナリ山の太陽、兄弟の夢、しかも、クマの穴で鍛錬した・・・・・そう・・・・・七色の魔球を自在にあやつる、レッドパンサー・サードなのだーーーーー?
!!!!!!!!!
ここで、解説しておきましょう。
レッドパンサー・サードとは、「クマの穴出身」の極悪非道のオネエ・レスラーなのである。
子だくさん家庭の長男に生まれたタケは、ある日、兄弟の食糧確保のために赤城山の大猿渓谷へと向かったのだ。
何故、大猿渓谷だったか不明であったが、正直屋の権さんの話によると、千本にひとつという稀少なランの花が自生していて、それが高価な値段で取引されているということだった。
彼は愛する兄弟のために、危険を覚悟でそこへ向かったのだ。
しかし、暗い山の中を歩いていると、大猿渓谷の主と思われるイノシシ大王に遭遇し,まだ戦いの術をもたないタケは、キバ攻撃を受けて瀕死の重傷をおってしまった。
「待っている兄弟のためにも、オレはまだ死ねない、死ねないんだー、生きて生きて行きぬいてやるぞー・・・!!!」
と言う強い意志で、歯をくいしばりながら、ふらふらと歩いていると、深い谷の中に洞窟を発見したのだ。
疲れ果てた体を休めようと、入口で横になっていると、寝返りを打った瞬間に、不覚にも穴の中に転げ落ちてしまったのだ。
・・・・・・・・気が付くと・・・そこには無数の目が、暗闇の中でうごめいていた。
何百・何千という数・・・そうなのだ・・・・ここは人も恐れる・・・ニャ・ニャ・ニャ・ニャンコロリーーーーーン・・・・・・クマの穴だったのだーーーーーーーー・・・?
がんばれタケ君、キミは兄弟たちの希望の星、満点の夜に輝く北極星、イナリ山の未来、浅間山大噴火だーーーーーー・・・みごと恐怖に打ち勝って、その黄金の左手で、七色の魔球をつかむのだーーーーーーーー?
来月号「に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
☆バンビー。
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス