第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(30)
皆さん、明けましておめでとうございます。
本年も、よろしくお願いします。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「な・な・なんだ・なんだ・この野郎―・・・・ふざけんじゃねーぞーーー!」
杉緒杉男は、キクさんからの呪縛を振り払うかのように、大声をはり上げたのだ。
だが、それは単なる強がりにしか過ぎなかった。
恐怖のあまり、声が震えているのは明白だったからだ。
「ヘイ・ベースマンよー・・・やってくれるじゃねーかーーよーー!」
彼女は杉緒杉男の胸元をグイッと左手で掴み、ニヤリと笑った。
その瞬間、「グェ・・・グェ・・・!」という嗚咽とともに、杉緒杉男が体ごと崩れ落ちたのだ。
今、キクさんの必殺のチャランボが、杉緒杉男のレバーに深く突き刺さったのだ。
そして・・・・・、崩れる去る彼の脳天に向かって、ジャンピングヘットパットを、ゴン・ゴン・ゴーン・・・たんすにゴーーンと、4発、連続で叩きこんだのだ。
杉緒杉男の頭には、正月のお供え餅のような巨大なコブが4個、ボコーーーンと、めでたく出来上がっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
突然、二人のファイトを癒すかのように、さわやかな風が吹いてきた。
「そろそろ、お別れだな、ベースマンよ・・・・!」
キクさんは両手で杉緒杉男を高々と持ち上げ「またなー!」と言いながら、桃の木川へ向けて投げ飛ばしたのだ。
彼は、セピア色の風に乗って、フワリフワリと飛んで行ったのだ。
それはまるで、揚力を目いっぱいに受けて壮快に飛ぶ、イカ飛行機のようだった。
!!!!!!!!
杉緒杉男との激闘も、キクさんにとっては日常のちっぽけな出来事の一つに過ぎなかったのだ。
彼女は、桃の木川のうたかたを数えながら、いつものように大好きな昼メロを思い出して、夢見る乙女になっていた。
それはもちろん、昭和の映画史上に燦然と輝く名画「君の名は」である。
昭和20年5月24日の東京大空襲の夜、数寄屋橋の上で互いに命を助けあった後宮春樹と氏家真知子は、半年後の24日の夜、この橋の上で再会しようと約束をする。
青年は、別れぎわに「君の名は」と聞いたが、彼女は名前を言わずに立ち去った。
・・・しかし・・・・・約束の夜・・・・・氏家真知子は現れなかった。
彼女は、頑固な叔父の強制で縁談の為佐渡島に滞在していたのだ。
・・・・・そして、ここから、ドロドロの愛憎劇が展開していくのだ。
「忘却とは忘れ去ることなり、忘れ得ずして、忘却を誓う悲しさよ。」という、有名なイントロが冒頭に流れていたのだ。
キクさんは真知子巻にした手拭いを頭から外して、思いっきりチーーーーン・チーーーーーンと、鼻を2回程かんだ。
この2回には、たいして意味はなかった。
あまりの切なさに、涙と鼻水がダラダラと流れたため、慎重になっただけのことだった。
「真知子さん、かわいそーーーーーう、真知子さん、かわいそーーーーーう・・・!」
もはや、キクさんの妄想は、誰にも止められなかった。
目を閉じて、愛の白昼夢の中に、勝手に飛び込んでしまうのだ。
・・・そして・・・・・・・ここは・・・何故か、いつものイナリ山の舞踏会・・・
♪ スピニングワルツ ♪ の調べが聞こえてくる。
その曲に乗って、セレブ達である、カメ師匠、権さん、イノクマさん、ツル先生たちが、ビシッと決めた跳馬ズボンを着用して華麗にフォークダンスをしているではないか。
・・・・やがて、曲が変わり、マイムマイムになり、全員が手をつなぐ。
バー・カウウンターでは、セレブたちが、岡本本家のキンカメを片手に、ゴキゲンに談笑しているのだ。
場末の片隅では、その景色を眺めながらシナモンティーをたしなみ、アンニュイな気分に浸っているキクさんがいた。
・・・・・・そして・・・誰かがそっと彼女に語りかけるのだ。
「キク様・・・・ボ・ボ・ボクと踊っていただけますか?」
魅惑のハイトーンボイス・・・・・そう、銀の仮面をつけたイケメン、華麗なるマスカレード、ミスターハリウッド・・・・・彼こそが、松尾松男なのだ。
キクさんは優しくエスコートされ、はじらいながら舞踏会の中心へゆっくりと歩いて行くのだ。
まさに彼女は、イナリ山のシンデレラ、イナリ山の人魚姫、イナリ山の白雪姫、イナリ山のダイヤモンドなのダーーーーーーーダッ・ダーーーーーーーン・・・・・!
松尾松男にうながされて、彼女は両手をそっとさしだす。
彼は、オーバーハングぎみに、キクさんの肩にやさしく手を回す。
それを見計らったかのように、名曲オクラハマミキサーがスタートするのだ。
・・・・・やがて、松尾松男の、まるで機関車トーマスのような荒い鼻息がキクさんのウナジを、マシンガンのように刺激する。
強靭な彼女ではあるが、彼の猛烈な鼻息攻撃にさらされて、青色吐息を漏らしながら思わず崩落ちてしまうのだ。
な・な・なんと・なんと・・・正直屋公認のイナリ山ヘビー級チャンピョンのキクさんではあったが、一つだけ弱点があったのだーーーーーーー・ン・・・!!
「イヤーン、ボッコーーーーン・・・・・フニャ・フニャ・フニャ・・・・!!」
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
☆バンビー。  
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス