第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(32)
夜空に輝くミルキーウェーイ・・・無数の星が瞬いている。
途方もない時間の流れの中で、星は誕生と消滅を繰り返しているのだ。
宇宙の果て・・・その向こうには、はたしていくつの宇宙が存在するのであろうか。
時間には終わりがあるのだろうか、空間には限界があるのだろうか。
無限に広がる銀河をながめていると、メランコリックな思いにかりたてられてくる。
・・・・・人は、宇宙創世をシャボン玉に例えることがある。
ウルトラビックバンにより幾つもの宇宙が形成されたが、あるものは膨張速度が速すぎて破裂してしまい、あるものは生まれてすぐに消滅してしまった。
そして、今だに膨張を続ける空間が、我々の地球が存在する宇宙だと言われている。
ところで、シャボン玉をふくらますと、二子や三っ子の球が出来ることがある。
その大きさはさまざまだが、各々の球はぴったりと密着しているものだ。
いや、密着というよりも吸着という言葉が似合うかもしれない。
両者は微妙な表面張力を保ちながら、あんがい長い間、存在するものだ。
仮に、我々の住む宇宙が二子や三っ子だったとしたらどうだろうか。
ひょっとして、空間をこじあけられれば、未知へのアドベンチャーになれるかもしれない。
案外、そのドアーは近くにあるかもしれないのだ。
徒歩10分、チャリンコで3分なんていう距離かもしれない。
!!!!!!!
・・・・・あそこには、はたして時間が存在していたのだろうか。
キイナと私を乗せた翼竜は、九十九谷の岩壁へ一気にダイブし、まるでジェツトコースターのように、歪んだ空間のドアーに吸い込まれていったのだ。
不思議なことに、生じるであろうGが、まったく感じられなかったのだ。
無意識の中の無意識・・・意識の中の無意識・・・いや、まさにゼロの中のゼロ・・・
一瞬の中の刹那・・・・気が付くと、九十九谷とは違う巨大な断崖の上空にいたのだ。
スッパリと切り立った岸壁、200mはあろうかという岩稜、北側には、奇岩の連続した山々がそびえている。
・・・たしか見覚えのある風景・・・・・あのノコギリのような山並み・・・・・・
これは、上毛三山の一つである妙義山ではないだろうか。
そして、この断崖絶壁は、荒船山北端の艫岩ではないだろうか。
・・・・・・・はるか眼下に、ひとすじの川が流れている。
こ・れ・は・・・・・西牧川だろう。
その横を、ぴったりと寄り添いながら、まるでヤマカカシのようにクネクネと蛇行して走る道は、国道254号のはずだ。
・・・・・・荒涼たる景観は・・・・・まさに、ジュラシックパークだ。
あちこちで、チィラノザウルスが獲物を捕食するために走り回っていても違和感がない状況だ。
!!!!!!!
「どうだい・・・・・ビビっている・・・?」
キイナが、弾んだ声で語りかけてきた。
「・・・・・・・・・・・・・・!」
私には恐怖で、返答する余裕など、まるでなかった。
「怖くて、チビッているんじゃないだろう・・・・!」
「・・・・・う・う・う・うるせーやい・・・ぜ・ぜ・ぜ・全然、怖くねーぜ・・・!」
ほんとうのところ、全力でキイナにしがみついているのがやっとのことだった。
返事をする余裕も、考える余裕もなかったのだ。
「じゃ、大丈夫なんだね・・・・・?」
「・・・・・か・い・ちょう・・・か・い・ちょう・・・PTA会長さんだぜ・・・!」
なんとかダジャレを返すことができたが、それが限界だった。
「おもらしをしているんじゃないかと思った・・・安心したよ・・・じゃー行くよー・・・!」
私は赤面しながら、一瞬、ズボンを抑えたのだ。
やがて、キイナの全身から先ほど耳にした高域周波数帯のモスキート音が発せられた。
「ウーーーーーー・ウーーーーー・ウーーーーー・・・!」
同時に、ホバリングをしていた翼竜が大きく吠えたのだ。
そして・・・・・艫岩の巨大な岩壁が、一瞬、歪んだのだ。
我々を乗せた翼竜は、その中へ音もなく、吸い込まれるようにダイブした。
薄れゆく意識の中で、まるで静止画を見ているような錯覚に陥っていた。
私は不覚にも、またしても失禁をしてしまい、ズボンがビショビショになってしまっていたのだ。
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
☆バンビー。
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス