第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(33)
ゼノンのパラドックスに、「アキレスと亀」とうい話がある。
俊足のアキレスと鈍足の亀が競争するものだが、ハンディとしてアキレスは亀の後方よりスタートするのだ。
例えば、両者が100メートル競走をしたとしよう。
亀はハンディをもらって、彼の50mメートル先からスタートする。
アキレスが亀の最初の位置まで走る間に、亀は何メートルか進んでいるのだ。
次に、その亀の位置まで走る間に、亀はさらに前に進んでいる。
これを何度も繰り返えすわけだが、俊足のアキレスは鈍足の亀に追いつけないというパラドックスである。
パラドックスとは、一見正しそうに見えるが現実的には間違っている考えや説のことである。
現実的に、このような競争を無限に繰り返すことなどありえない話である。
短距離走者の桐生選手が100メートルを走った場合、9秒98で走り抜けてしまう。
ようするに、アキレスが亀に追いつく前では絶対に追い越せないという、当然のことに過ぎないのだ。
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だが・・・・・この当然の事が、当然の事ではない・・・そんな世界が存在したらどうだろうか。
・・・・・世界というよりも、宇宙と表現した方が良いかもしれない。
キイナの話から推測すると、宇宙には二つのシャボン玉のように、接触又は交差した影の宇宙があるようで、両者の間には小さな緩衝地帯が存在しているという。
今ある宇宙が実数Bならば、影の宇宙は虚数Ciなのだ。
そして、その緩衝地帯は複素数A=B+Ciということになるのだろう。
彼女は、複素数Aをリバと呼んでいたのだが・・・リバを通ることで瞬時に空間移動が可能になるのだそうである。
リバの粒子は、ダークマターと弾き飛ばされたホトンで構成されていているようで、ジェツト気流のように一定の方向に流れているのだそうだ。
あたかも偏西風のように、プラスとマイナスの方向が存在していて、坊主頭のキイナは、流れを掴んで移動するのだそうだ。
何より驚いたことには・・・・・リバには時間という概念が存在していないのだ。
五老峰の中の一つである九十九谷からのダイブの時に体験したもの・・・あれは。まさに、リバを通過して移動したものだったのだ。
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「・・・ウーーーウーーーーウーーー・・・」
翼竜の声に、私は思わず目を開けてしまった。
気が付くと、そこはサンピラーのようにキラキラと輝く、眩いばかりの異空間であったのだ。
幾つもの小さな粒子が、まるで雨上がりの水滴のように光っている。
手で掴もうとしても掴めない・・・魔法の世界に引きずり込まれたような感覚・・・
かつて、幼少の頃に夢にでてきたような世界だった。
あたかも木馬に乗っているかのように、キイナと私を乗せた翼竜は、規則正しく上下に揺れながら、リバの中をゆっくりと進んで行ったのだ。
ファンタジックな光景とあまりの心地の良さに、私は思わず童謡を口ずさんでいた。
・・・・・・・・その時だった。
左45度に・・・突然、黒い斑点のような粒子が出現したのだ。
その斑点は、一つだけではなかった。
一瞬の間に、何十、何百という数に増殖していったのだ。
それらは風船のように急激に膨張しながら、我々の方向に接近してきたのだ。
「ア・ア・ア・ア・ア・・・・アン・ルイコ・・・アン・ルイコ・・・!」
目をこらして見ると、まるで、ティラノザウルスの頭部のような形をした、おぞましい物体だったのだ
「ア・ア・ア・ア・ア・・・・アン・ルイコ・・・アン・ルイコ・・・!」
やがて、すべての黒い物体が口を思いっきり大きく開け、我々を一気に丸呑みしようと、おそいかかってきたのだ。
「ア・ア・ア・ア・ア・・・・アンコロモチ・タベターーーイ・・・
隣の客はカキ食う客だーーー・・・隣の客はカキ食う客だーーーー・・・
キ・イ・ナ・・・キ・イ・ナ・・・キイナちゃーーーん・・・怖いよーーーーーん
・・・怖いと言ったら龍丸散・・・牛の小便・長野県・・・ウエーン・ウエーン・・・
ウエンツ・英一・・・・オレって小っちゃーい・・・オレって小っちゃーい・・・
小っちゃい奴やねーーーん・・・ビッグになりたいよーーーん・・・!」
私は、またしても恐怖のあまりに失禁をしてしまい、ズボンをビショビショに濡らしてしまつたのだ。
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
☆バンビー。
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス