第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(34)
小学校4年生の頃、私のコンプレックスは身長が低いことであった。
それまでは前から2番目だったのだが、一番目のクニオが引っ越してしまったため、トコロテン式に、先頭になってしまったのだ。
教師が大きな声で「前へならえ!」と、号令をかけると・・・先頭は、手を腰に当て・・・2番目以降は手をまっすぐに前へ伸ばす。
腰に手を当てている自分の姿に、オレは「なんてちっちゃい人間なんだ!」と思い悩み、とても気恥ずかしかった。
大きくなりたいと、ジミー隊長の家のヤギの生乳をしこたま飲んだら、たんとゲリをしてしまった。
それならばと、隣で飼育されている和牛にしゃぶりついたのだが、後足で蹴飛ばされ、板塀に頭ごとめりこんでしまった。
鉄棒にぶら下がったり、荒縄で首と足を縛り、思いっきり伸ばしてはみたが・・・・
そう簡単には大きくはならなかったのだ。
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さて、4年生に進級した頃、ひょんなことから少年ホースに「クメ」というルーキーが加入してきた。
別に、団員募集のチラシを配布したわけではないのだが・・・あくまでもなりゆきだったのだ。
クメとは、同級生だったが・・・とにかく見上げるような巨人だった。
小学生だと言うのに、中学生に見えた・・・いや、高校生に見えたのだ。
当時、テレビでプロレスを盛んにやっていたのだか、豊登やサンダー杉山と戦っていたモンスター・ロシモフ(後のアンドレ・ザ・ジャイアント)のようだったのだ。
実況アナウンサーが、ロシモフは成人しても身長が伸びていると話していたので、クメが3メートルを越えるのは時間の問題だと思っていた。
私から見れば、まるで東京タワーのようだったのだ。
もちろん、学校で整列すると、クメのポジションは一番の最後尾で、頭二つ分飛び出ていたため、すぐに発見することができた。
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ところで・・・何と言っても・・・・・クメは謎に満ちていたのだ。
第一の謎は、頭がオヤジカットだったことだ。
節約のためなのか、あるいは他に意味があったのだろうか・・・どこから見てもド素人がやらかしたような、悲惨なヘヤーカットだった。
髪の長さは3センチほどの中途半端で坊ちゃん刈り・・・ところどころトラガリになっていた。
いっそうのこと、丸坊主の方か良かったのではないかと思っていたが、やはり何らかの理由があったのだろうか。
第二の謎は、いつも同じ水色の体操着を着用していたことだった。
父親のお下がりなのだろうか、数か所に穴があいていた。
盗難防止のためなのか、背中に大きな字で「クメ」と書いてあったのだ
「そんなズナイもん、名前を書いたって誰も盗まねーべー!」
トラオがそう言ってからかうと、クメはニヤリとネコのように笑った。
余談だが、ネコのヒゲを片方だけ持ち上げると笑っているように見えるのだ。
また、両方のヒゲを持ち上げるとダブルで笑っているように見えるのだ。
だが、調子に乗って、しつこくやり過ぎると怒り出して、噛みつかれることがあるので、取扱いには十分に注意が必要である。
「じゃー、正直屋のヤギにでも着させたらどうだんべなー?」
ハツの発言に、トラオが食い付いた。
「ヤギは体臭がスゲーかんなー、鼻がまがっちまうぞー、イノクマさん家のブタなんかどうだんべー?」
「いや、やっぱりヤギだんべー・・・この前、ハカチェが吸い付いていたぞー!」
「しまった!」と、思った。
ハツが、見ていたのか?
「和牛にも、吸い付いていたぞー・・・ハカチェって、乳好きだからなー!」
トラオにも、見つかっていたのか?
私は、安易な行動をとってしまったことを、たんと反省した。
「じゃー、ハカチェに着せればいいだんべー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ!」
「そうだんべー、そうだんべー・・・ハカチェは、乳好きだからなー・・・チ・チチ・チ・チ・・・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・・・ははノンキ!」
トラオとハツは、この話題で1時間も盛り上がっていた。
「ハカチェなら、何を着ても似合うんベー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ!」
「そうだんべー、そうだんべー・・・ハカチェは、乳好きだからなー・・・チ・チ・チ・チ・・・ハ・ハ・ハ・ハ・ハ・・・ははノンキ!」
何故か、クメの体操着の話が、乳好きの話になってしまっていた!
私は、とばっちりを受けて、気分がたんと盛り下がってしまったのだ。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
☆バンビー。
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス