第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(38)
翌日、チミー隊長の一言で、シノビに対する特訓がはじまったのだ。
隊員には必殺ワザが与えられて、トラオはコプラツイスト、タケはラリアット、ハツはブレーンバスター、隊長はドロップキック、私はニードロップだった。
それぞれが、ワザの完成度を高めようと気合を入れて練習を開始したのだが・・・
時間の経過とともに、はたして、こんなワザが実践で使えるのか、たんと疑問に思えてきたのだ。
そもそも、私のニードロップなど、高い所に登らなくてはならず、その間に敵は逃げてしまうだろうし、隊長は、ドロップキックを必死に練習をしていたが、体重のせいで高く飛べずに、ころんでいるようにしか見えなかった。
ハツのブレーンバスターも、低身長の彼には相手を掴む事ができないだろうし、掴む前に投げ飛ばされてしまうだろう。
トラオのコプラツイストも同様で、もたついている間に、逆コプラツイストを仕掛けられてしまうかもしれない。
唯一、攻撃のチャンスがあるとすれば、タケのイナリ山式ラリアットだけだろうか。
運動神経のよい彼ならば、相手の隙を突けるかもしれない。
・・・・・そんなわけで、わたしは隊長に、この疑問をぶつけてみたのだ。
「隊長、わりーけんど、こんなワザはシノビには通用しねんじゃねえだんべかー?」
すると、彼はトマトのように顔を真っ赤にして、反論してきたのである。
「な・な・な・なによー・・・これはなー、チノビを倒す必殺方程式だんべなー、スペシャルなんだよー・・・ス・ペ・シャ・ルーーー・・・プレミアムなんだよ・・・プ・レ・ミ・ア・ムーーー・・・!」
何が必殺方程式なのか、何がスペシャルなのか、何がプレミアムなのか・・・私にはたんと理解ができなかった。
隊長は、相変わらずシノビをチノビと呼んでいたが、やがて何かに気が付いたようで・・・・・・顔を紅潮させながら、考え込んでしまった。
「そうか、そうか、ふむふむ・・・ネコふむじゃった・・・イヌふむじゃった・・・ニャン・ニャン・ニャニャーーーン・ワンワン・ワワーーーーン!」
突然、彼は涅槃大仏のように、その場に横たわってしまったのだ。
そして、深い眠りに入ってしまった。
いくら隊員が呼んでも、けっして起きることはなかったのだ。
!!!!!!!!!
1時間後・・・・・頭の中の疲労物質が完全にクリアーされたためなのか、いきなり隊長が飛び起きたのだ。
「ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
隊長は完全にイッテしまったのか、あるいはヤラカシテしまったのか、しばらくの間、笑い続けていた。
「隊長、大丈夫ですか・・・そろそろ、もどって来るかい?」
頃合いを見はからって、トラオが声をかけたのだ。
「ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・ボクって、頭が良いんだよな・・・天才なんだよな・・・すごすぎるんさ・・・こわいよ・・・!」
いつものように、自画自賛がはじまったのだ。
「ボクって、英語で夢を見ちゃうんだぜー・・・すげーよなー・・・こわいよなー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
すると、タケがお決まりのコースで持ち上げるのだ。
「隊長は鼻がズナイからなー・・・本当はイギリス人じゃねーのか!」
わたしも調子に乗って、持ち上げるのだ。
「隊長はアゴがビックだからなー・・・本当はアメリカ人じゃねーのかー!」
彼は、この言葉を聞くと、待ってましたとばかりに、歓喜の渦の中に素直に飛び込んでしまうのだ。
「そうなんさー、そうなんさー・・・ボクも本当は外国人だと思っているんだよ!」
ふたたび、タケが爽快に持ち上げるのだ。
「やっぱり、そうかーい・そうかーーーーい・そうかーーーーーーい・・・そうだと思ったぜーーー・・・隊長は鼻がズナイから、イギリス人だんべー・・・!」
わたしも調子に乗って、追い打ちをかけるのだ。
「そうだんべ・そうだんべーー・そうだだんべーーーーーーーーーーー!・・・隊長はアゴがビックだから、アメリカ人だんべーーーーー・・・!」
彼は必殺の二段攻撃を受けて、完全にアッチの世界に行ってしまった。
「やっぱり、キミたちにはわかっちゃつたんだなーーー・・・・ボク、隠していたんだけどもーーー・・・本当はーーー、外国人なんだよなーーー・・・・・!!」
しかし、どこから見ても隊長はりっぱな黄色人種であり、まぎれもなく、権さんとカネコさんとの合作による純粋な日本人だったのだ。
ズナイ鼻も、ビックなアゴも、二人のDNAをしっかりと受け継いでいたのである。
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
☆バンビー。
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス