第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(40)
特訓の中に「秘技・手カンチョー」という種目があった。
これは忍者のように両手を合わせ、ニンニンと言いながら、敵のコウモンへめがけて一気に指を突き刺すという恐ろしい荒ワザなのだ。
チミー隊長の大のお気に入りで、少年ホースの中の一番の使い手として、全員に特訓をさせていたのである。
「いいか・・・こうやって手を組んで、ズボッとやるんだ・・・諸君、わかったかーー!」
隊長は自ら模範を示すかのように、大胆にエアー・カンチョーをおこなった。
「ようし・・・全員、かまえろー・・・準備はいいか・・・両手を組んで、腹に力を入れるんだー・・・かまえるんだー・・・いくぞー・・・!」
隊長の指揮のもとに、いよいよ特訓が開始されたのだ。
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
号令とともに、空にむかってズボッ・ズボッと叫びながら指を突き刺すのだ。
「おまえら、元気がねーだんべー・・・もっと、声をはりあげるんだーーー!」
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
この特訓が始まったとたんに、チミー隊長の目が怪しく輝きだしたのだ。
そして、次のパターンに移っていった。
「こんなことをやっていてもダメだんべー・・・実践だ、実践だ・・・おい、ハツ・・・一歩前へ出ろやー・・・!」
ハツは両手でコウモンを押さえながら、前へ出ようかどうしようかと迷っていた。
「おい・・・どうしたー・・・とっとと、前へ出ろーやー!」
隊長の勢いに押されて、ハツがモジモジしながら、ほんの少し歩み出たのだ。
「よーし・・・いいぞ・・・頑張ってケツを出して見ろー・・・!」
「エーー・エーー、ウソ・ウソ・・・ウソだんべー・・・それはねーべー・・・!」
ハツは、しきりにコウモンを押さえながらブツブツと言っていた。
「なにをやってるんだー・・・そんな事ではチノビに勝てねーぞー・・・勇気を出せー・・・勇気を出すんだーー・・・!」
こんなことは勇気でも何でもない・・・そんなに簡単に、勇気など出せるはずもなかった。
まるで、アブナイ・プレイではないか?
「そうかーい・そうかーーーい・そうか――――い・・・!」
突然、隊長が爽快に叫んだのだ。
「これは、全体責任だな・・・いいか、全員、後ろを向けーー・・・前傾姿勢をとれーーー・・・気合を入れろーーー・・・・いくぞーーー・・・!」
隊長は、団員たちのコウモンめがけて、有無を言わさずに一気に荒ワザを仕掛けたのだ。
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
「う・・・・・う・・・・・う・・・・・う・・・・!」
団員たちは、思わずコウモンを押さえて嗚咽をもらした。
隊長は、そんなことにはおかまいなく、より怪しい微笑を浮かべながら2回戦にチャレンジしようとしていたのだ。
「いいか、今度はスピードがちがうぞ・・・マッハだ・マッハだ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・・・オレの指が、暴れたくて騒いでいるんだよ・・・ウヒョーン・ウヒョーン・ウヒョヒョヒョヒョーーーン・・・!」
彼は両手を空に向けて、大胆なポーズを決めながら、一段とアブナイ目つきになっていったのだ。
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
「1・・・ズボッ・・・2・・・ズボッ・・・3・・・ズボッ・・・!」
「う・・・・・う・・・・・う・・・・・う・・もう・ギ・ブ・アッ・プだんべー・・・!」
全員がバタバタと前に倒れ、思わず脱糞をしてしまったのだ。
強烈な痛みに襲われて、一瞬、下半身がシビレた・・・・・丹田に力が入らなくなり、立ち上がることができなかった。
「いいか・・・チノビは卑怯者だ・・・きったねえ野郎だ・・・プタ野郎だ・・・チノビなんかに負けねーぞー・・・全員、勇気を出して立ち上がるんだ・・・さあ、さあ、いつものように、力強く立ち上がるんだーーー・・・!」
隊長は一人で盛り上がっていたが・・・卑怯者も、きったねえ野郎も、プタ野郎も、隊長の方だと確信したのだ。
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス