第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(43)
「おたすけくだせー・巨人さまー・・・おたすけくだせー・巨人さまー・・・!」
私が必死になって叫んでも、巨人の腕を振りほどくことは出来なかったのだ。
「おたすけくだせー・巨人さまー・・・おたすけくだせー・巨人さまー・・・!」
あまりの恐怖からか、少しずつ意識が遠のいて行くのがわかった。
無意識の中の意識、意識の中の無意識・・・・・このままシメ殺されるのかと思った・・・が・・・・・巨人のダキシメは、それ以上に強くなることはなかった。
むしろ、ゆりかごの中にいるような快さを感じはじめていたのだ。
ゴツゴツとした感触とは違う、コメリの低反発マットレスのような温かさだった。
そして、不思議なことに、巨人は私の頭の毛をしきりに掻き分け始めたのだ。
まるでサルが毛づくろいをしているかのように、何度も何度も掻き分けたのだ。
何か探し物でもあるのだろうか・・・宝物でもさがすような・・・慎重に、しかも細部にわたって撫でていたが・・・私には、皆目見当がつかなかった。
なにより、巨人の毛づくろいはとても気持ち良く、ヘッド・スパを施術されているような感触で、雲の上を歩いているかのような快感だった。
いつしか私は・・・巨人の腕の中で、浅い眠りに落ちてしまったのだ。
!!!!!!!!
「ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
大きな笑い声で、目がさめた。
目を開けると、少年ホースの団員たちが、大声で笑っているではないか!
「ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・お・お・お・おめーは、クメだんべー・・・クメだよなー・・・そうだよなー・・・3組のクメだよなー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョー・・・!」
トラオが巨人を指差して、笑っていた。
「そうだ・そうだ・・・オレも見たことがあるぞー・・・今年、引っ越して来た奴だんべー・・・3組だよなー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
タケも巨人を指差して、笑っていた。
「おい、見て見ろー・・・体操着に、クメって書いてあるぞー・・・!」
トラオが再び、指差をした。
「どこだ・・・どこだ・・・どこだーーー・・・どこだんべーーー・・・!」
ハツが、その場所を探そうとしてジャンプした。
「後ろだよー・・・背中に書いてあるんべなー・・・!」
虚弱体質のハツが、巨人の後ろに回り込んだ。
なんと・・・体操着の背中には、大きな字で「クメ」と書いてあったのだ。
「でっけー字だなー、体がでっけーんで、字もでっけんだんべなー、ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
秘密基地の中は、団員の笑い声であふれかえっていた。
さっきまで白目をむいてひっくり返っていたトラオが、何事もなかったかのようにはしゃいでいるではないか。
その時だった。
チミー隊長が、いきなり立ち上がったのだ。
「諸君、待て、待て・・・待つのだ・・・クメはチノビかも知れないぞ・・・簡単に、信用してはいかん・・・魂を抜かれるぞ・・・!」
隊長は、顔をトウガラシのように赤く染め、クメを睨みつけたのだ。
「・・・んじゃー、どうしたらいいだんべかなー・・・!」
ハツが、不安そうに尋ねた。
「テレビで、カツ丼を食わせていたぞ・・・・・何か食わせたらどうだんべか・・・口を割るかも知れねえベー・・・!」
トラオが、ひょうたん顔で答えたのだ。
「ヤキソバなんか、いんじゃねーかー・・・焼きまんじゅうも、いいだんべなー・・・!」
ハツが、ヨダレを流しながら言った。
「そりゃー、おめーが食いてえからだんべーなー・・・ウ・キョ・キョ・キョ・・・!」
「バレたんきやー、じゃあ、しょうがねーなー・・・ン・キ・キ・キ・キ・・・タメさんちのオデンも、うんめーだよなー・・・イノクマさんちのしょう油ダンゴもいんだよなー・・・ホ・キ・キ・キ・キーーーー・・・!」
ハツがグルメに興奮をして、奇声を上げたのだ。
「いっそうのこと、岡本本家のキンカメでも飲ませて、酔っぱらわせたらどうだんべかなー・・・口を割るかも、しんねーぞー・・・ウ・キョ・キョ・キョ・・・!」
トラオの発言に、全員が笑いころげたのだ。
「そりゃーダメだんべー・・・いっくらクメがでっかくったって、未成年だんべなー!」
チミー隊長が、口をヒョツトコのようにとからせて、マジ顔で発言をした。
「おい、もしかしてクメは20歳かもしんねーぞー・・・!」
ふたたびトラオが、からかうように追い打ちをかけたのだ。
「そんなことはねーべー・・・ヒゲがはえてねーぞー・・・ウ・キョ・キョ・キョ!」
「いんやー・・・貝印で剃ってるかもしんねー・・・しかも、二枚刃を使っているかもしんねーぞ・・・ク・ク・ク・ク・ク・・・!」
クメをダシにして、少年ホースの団員たちは、腹いっぱいに盛り上がったのだ。
☆バンビー。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス