第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(46)
「いいか、キミたち、ここから先は危険地帯だ・・・どこかにチノビが潜んでいるかもしんねーぞー・・・アイツらは卑怯者だ、汚ったねえ野郎だ・・・十分、注意するんだ、わかったかー・・・!」
韮川分水のA地点に到着した頃、唐突に、チミー隊長が叫んだのだ。
ここは、利根川のB地点まで半分の距離にあり、川には大きな鉄の堰があった。
水田用に、川が分岐していて、閑散期の冬場には堰を閉じてしまうため、この先の水路には水はなかった。
隊長は、相変わらずチノビを引きずっているようで、それに怯えているかのようにキョロキョロと周囲を見回していた。
全員、心の中では、卑怯者も、汚ったねえ野郎も、隊長の方だと苦笑いをしていたが、・・・正直屋から持ってきた大事なおやつのタイワンバナナがあったため、「オー・オー・オーーーーー・・・!」と、適当に、叫んでいたのだ。
「いいか、今から、ボクのことをポスと呼ぶんだ・・・わかったか、諸君!・・・おい、ハツ呼んでみろ・・・!」
急にふられて、ハツは困ったように頭を掻いていた。
「ヘイ、ポス・・・わかりました・・・ポス・・・!」
「なんだとー、この野郎・・・ポスじゃねー、ポスだ・・・わかったかー、カボチャ野郎めー・・・!」
思ったとおりの返答がなかったので、おおいに憤慨したようだ。
「おい、ハツ・・・もう一度、呼んでみろ・・・!」
「ヘイ、ポス・・・これでいんでがんすか・・・?」
「これでいんでがんすだとー、ふざけんじゃねー、この間抜け野郎―!・・・どこに耳があるんだよー・・・話になんねーなー、ラッキョ野郎めー!」
隊長は落胆して・・・そして、すぐに激怒し、顔を完熟トマトのように赤くした。
ハツは、彼が何を望んでいるのか理解に苦しんでいるようで、頭を掻いてごまかしていた。
「おい、ハカチェ・・・オメーが呼んでみろー・・・!」
今度は、私にふって来た。
「はい、わかりました・・・ボス、よろしくおねげーします・・・!」
・・・・・どうやら、これが正解であったようで、彼は、満面の笑みを浮かべて私に語りかけてきたのだ。
「ハカチェ、もう一度、呼んでくんねーかー・・・!」
私は、すかさず返答をした。
「はい、わかりました・・・ボス、よろしくおねげーします・・・!」
「うれしいねー・・・ハカチェなら、わかってくれると思ったぜー・・・おめーは最高だな・・・少年ホースの誇りだぜー・・・!」
そう言うと、隊長は袋に入っていたタイワンバナナを1本くれたのだ。
私は、隊員たちに横取りにされる前に、すばやく口の中に放り込んだ。
なんて、上品な味だろう・・・バナナは雪解けのアイスのように、口の中でゆっくりと溶けて、まるでメリーゴーランドに乗っているような、まるで赤城山の山頂でうたた寝をしているような幸せな気分になったのだ。
・・・そうなのだ・・・隊長は滑舌が悪いため、ボスをポスと発音していたのだ。
「ヘイ、ボス・・・わかりました、ボス・・・ボス・ボス・ボス・・・!」
私の答えを聞いて、隊員たちは口々に叫んだのだが、時すでに遅し、であった。
彼は「ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・!」と、村会議員のように手を振るだけで、もはや気前よくバナナはくれなかった。
ハツは、私の捨てたバナナの皮を拾い、内側を前歯で器用に掻き分けて「うんめーなー、うんめーなー・・・!」と、言いながら食べていたのだが、頭上から「謎の巨人クメ」に、簡単に奪い取られてしまった。
クメは、それを大事そうに両手で包み、小ネコのようにニャン・ニャンといいながら、ペロペロとなめていた。
☆バンビー。
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス