第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(47)
チミー隊長の提案により、A地点から先はチノビに見つからないように、各人が散々になって行動することになったのだ。
「諸君、集合場所は利根川のB地点だ・・・今から、2分間隔でスタートする。
みんな、チノビには注意するんだ・・・キャンプ利根川で待っているぞ・・・わかったか!」
隊長は、かなり興奮をしていたが、団員たちは皆、シラケていた。
もともと、チノビの存在など誰も信じていなかったし、信じている人がいるとすれば、それは、おめでたいチミー隊長だけであったからだ。
「オイ、ハツ・・・わかったか・・・?」
またしても急にふられ、彼は一瞬動揺して、フラダンスをした。
「・・・ヘイ、ポス・・・わかりやんした・・・!」
「おめーは頭がわりーなー・・・ポスじゃねんべー、ポスだよー!」
隊長は、心底あきれたかのように、頭を大きく横にふった。
「みんな、いくぞー・・・エイ・エイ・オー・・・気合をいれるんだーー!」
「・・・エイ・エイ・オーーーーーーーーーーーー!」
「オイ、ハツ・・・わかったか・・・?」
「・・・ヘイ、ポス・・・わかりやんした・・・!」
「おめーは本当に頭がわりーなー・・・何度言ったらわかるんだよー・・・ポスじゃねんべー、ポスだよー・・・まったく、お手上げだぜー・・・!」
隊長の言葉に圧倒されて、ハツは何故か、そっと手を上げたのだ。
!!!!!!!
一番頭の悪いのは、チミー隊長であることはわかっていたのだが・・・
・・・いよいよ、隊長・ハツ・トラオ・タケ・私・クメの順番で出発することになったのだ。
各人、2分間隔でスタートしたのだが、私の前を行くタケは恐ろしく足が速いため、あっという間に後姿が見えなくなってしまった。
頃合いを見計らい私も出発したのだが、いつものようにクメが背後霊のようにピッタリとくっついてきた。
「おい、こんなに接近して歩くと、チノビに見つかるぞ、少しは離れろやー・・・!」
私の問いかけで、10メートルほど距離をあけたのだが、やがてニャニヤしながら接近してきた。
いつもの事なので、そのうち気に留めることもなくなった。
!!!!!!!!
B地点へ行くには、いくつもの畑や水田をこえて行かなければならない。
冬期なので、それらには農作物は作付されていなかったため、どこを歩いても問題はなかった。
からっ風が吹きすさび、砂塵が舞い上がって、周囲はゴミ砂漠のように白くなっていた。
国道354号を横切り、100メートルほど進んだ時だった。
一瞬、左足が沈んだような気がした。
別に、歩行には問題はなかったので、そのまま直進したのだ。
たぶん、粘土質のせいなんだろうと、単純に考えていた。
その時だった・・・・・・・・!
「ウォーーーン・ウォーーーーーン・ウォーーーーーーーン・・・!」
背後で、オオカミのような不気味な声がしたのだ。
「ウォーーーン・ウォーーーーーン・ウォーーーーーーーン・・・!」
ま・ま・ま・・・まさか・・・これが、ジミー隊長の恐れるチノビなのだろうか?
私は、急遽、臨戦態勢に入った。
地面に伏せ・・・少しずつ方向を変えた・・・そして、静かに後方を振り返ってみると・・・なんと、クメが土の中にスローモーション映画のように、沈んでいくではないかーーーーー!
「カ・カ・カ・カ・カ・キ・ク・ケ・コーーーーン・・・!」
こ・こ・こ・・・これはーーーー、緊急事態だーーーーー!!!
クメが、クメがーーーーー・・・地面に吸い込まれているではないかーーーーー!
「タ・タ・タ・タ・チ・ツ・テ・・・トーーーーーーン・・・トンカツ屋のトチロウさーーーん・・・八百屋のハチマキさーーーーん!」
これこそが、チノビの仕業なのか・・・奈落の底にひきこまれているぞ!
おそるべし・・・チノビの「必殺こえだめ返し」の術だーーーーー!
何とかしなければ、何とかしなければ、と右往左往しているうちに、とうとう首まで沈んでしまった。
仲間を呼ぼうとしても、完全に姿が見えなかった。
周囲には木片もなく、助けようにも、チビの私には手が届かなかったのだ。
「クメーーーーー、クメーーーーー、クメーーーー!!!」
パニック状態に陥った私は、ただクメの名を絶叫するばかりであったのだーーー!
☆バンビー。
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス