第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(52)
私の導き出した結論は・・・「ナメクジ」だった。
極度の寒さにさらされたため、塩を振りかけられたナメクジのように、大事な部分が縮小してしまったのだ。
「どんなナメクジでも寒さには勝てずに、極寒のタイガの中に一人さみしく埋没してしまつたのだろう。」と、勝手に判断したのだ。
そして私は、恐れ多くも本物を間近で拝顔することができて、我々の一歩も三歩も先を行くクメを、イナリ山偉人伝の一人に加えることに、なんら躊躇することはなかったのだ。
こんなにもグレートな人間が身近にいることを誇りに思い、ただただ感動するばかりであったのだ。
人生って、なんてすばらしいのだろうか・・・!
人間って、なんてすばらしいのだろうか・・・・!
イナリ山って、なんてすばらしいのだろうか・・・!
サイコー、サイコーーーーだぜーーーー、イナリ山、バンザーーーーイ・・・!
私は、あらためてイナリ山に生まれたことに感謝したのだ。
・・・だが・・・それでも、何故か・・・何故かーーーーー・・・・・!
・・・頭の片隅に引っ掛かる物があったのだーーーーー・・・・・!
・・・1パーセントの疑問・・・あの身長と、縮小率・・・はたして・・・私の下した答えは、正解だったのだろうか?
それは、手のひらに刺さった小さなトゲのように、見えそうで見えない真実だったのだ。
しかし・・・夏の暑さで氷河が溶けるように、やがて静かに・・・小さな謎が・・・解ける日が来るのだが。
!!!!!!!!
仲間たちと合流したのは、あれから2時間後だった。
衣服の方は多少生乾きの部分はあったが、そんなに気にするほどでもなく、小春日和の中、一日遊んで過ごすには気持ちの良い天気になっていた。
団員たちは、いつものように野山を走り回り、長いツルにぶら下がってターザンごっこをしたり、利根川の水切りに興じていたのだ。
・・・やがて・・・二人が到着すると、団員たちが駆け寄ってきた。
「おい、おめーたち、おせーぞー・・・!」
「何やってたんだよー、このーー・・・?」
チミー隊長と腰ギンチャクのハツが、けげんそうな目つきをして近寄ってきた。
ところが、彼等は3メートル手前で突然立ち止まり、何やら臭いをかぎ始めたのだ。
クン・クン・クン・・・クン・クン・クン・・・クン・クン・クーーン・・・!
クン・クン・クン・・・クン・クン・クン・・・クン・クン・クーーン・・・!
「おめーら、なんかクセーーんじゃねーのか?」
「ほんとうだ、クセーーぞ、たんとクセーーーぞ!」
二人は、鼻をつまんで騒ぎ始めた。
「クセー、クセー・・・なんだこらー・・・たまらんぞー・・・!」
「ほんとだー、クサ過ぎだでーー・・・!」
後から来たトラオとタケも、騒ぎ始めた。
私は一瞬ためらったのだが、事の次第を話すことにしたのだ。
「それがさー、すごかったんさー・・・チノビにやられたんだよ・・・クメが、コエダメの中に引きずりこまれたんだぜー・・・!」
この話を聞いたとたん、待ってましたとばかりに、隊長の目がギラギラと輝き出したのだ。
「そ・そ・そ・・・そうだったんきやー・・・そうだと思ったぜーーー・・・チ・チ・チ・・・チノビは卑怯者だ、きったねー野郎だ、プタ野郎だ・・・ボ・ボ・ボ・・・ボクがいればなー、やっつけてやったのになー・・・チクショー、チクショー、チクショー・チクチクショーーーー・・・!」
隊長は震えながら、しきりに悔しがっていたが、実際のところ、そこにいなくて良かったと思った。
彼はパニクってしまい、二重事故を引き起こしてしまっただろうし、おまけに事態を複雑にしてしまっただろう。
突然、ハツがここぞとばかりに、持ち上げ始めた。
「隊長がいればなー、チノビなんてカンピロピンにやっつけてやったのになー・・・隊長、残念でしたねーーー・・・カンピロピンにやっつけてやったのになー・・・!」
「そうだよなー、そうだよなー、キミもそう思うだろう・・・ボクがいればなー、たんと実力を見せつけてやったのになー・・・残念で仕方がないよー、まったくもー・・・て言うか、カンピロピンじゃねー、簡単だー・・・この、コエダメ野郎めーー、恥を知れーーー・・・!」
腹の調子が悪かったのか、チミー隊長は、一味トウガラシのように顔を赤くしておおいに激怒していた。
持ち上げに失敗したハツは、そっと手をあげて、奇妙なフラダンスをしたのだ。
バンビー。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス