第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(53)
「そいで、どーしたんだい・・・チノビに、からまれたんだろー・・・?」
トラオが、グイーーーン・グイーーーーンと身を乗り出してきた。
「そんだ、そんだ・・・チノビはどーしたんだよー?」
タケも興奮して、トラオを押しのけてグイーーン・グイーーーン・グイーーーンと、至近距離30センチまで迫ってきたのだ。
・・・私はジラスように・・・ゆっくりと話を始めた。
「・・・チノビは強敵だったぜー・・・クメがなー・・・簡単にコエダメに引きづり込まれたんさー・・・でもなー・・・ところが、どっこいだぜー・・・クメのメガトンパンチさ・・・あれは、必殺ワザだなーー・・・たいしたもんだぜ・・・メガトンパンチ一発で、チノビが利根川までブッ飛んで行ったんだぜ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ――――――ン・・・!」
私は調子に乗って、ラッパを吹きまくったのだ。
「そうかーい、そうかーーい、そうかーーーい・・・そういえば、利根川に何か落ちたような音がしたぜー!」
すると同調するかのように、タケが、爽快に語ったのだ。
「オ・オ・オ・・・オレも、ザブンという音を聞いたぜ・・・スゲー・スゲー・スゲー・・・すごすぎるぜーーー・・・!」
トラオも興奮して、同じ言葉を何度も繰り返していた。
「あいつらはよー・・・姿を見せねーんだけどよー、突然、仕掛けてくるんだぜー・・・みんな、気を付けてくんなーい・・・しかし、クメのメガトンパンチはスゲーぜー・・・プロボクサーになれるぜー・・・チャンピョンも夢じゃねーな!!」
ラッパはトランペットになり、やがてスーザーホンのように巨大になった。
「クメって、すげーなー・・・!」
ハツが、羨望の眼差しでクメをマジマジと見上げた。
しかし、クメは相変わらず無表情で無口であった。
「すげー、すげーー、たんとすげーだんべーーー、カメ師匠より、スゲーんじゃねーのかいー・・・!」
ハツが感動して、クメを持ち上げた。
「いんやー、カメ師匠どころの話じゃねーぜー・・・ドボルザーク・テツオ君より、スゲーんべー・・・!」
すかさず、タケも称賛しまくったのだ。
「いんや、いんやーー、ドボルザーク・テツオくんどころの話じゃねーぞー・・・シューマン・カズオくんよりスゲーだんべなー・・・!」
トラオも、負けずにヨイショをカマしまくったのだ。
「いんや、いんや、いんやーーー、シューマン・カズオくんどころの話じゃねーぜ・・・ハイドン・タネオくんよりスゲーんべー・・・!」
最後はハイドン・タネオ君で、とどめを刺したのだ。
私の猛烈なラッパで、クメは一躍、イナリ山ヒーローのトップに躍り出たのだ。
!!!!!!!
「でもなー、ボクには、神奈川県だんべなー・・・!」
その時、置いてきぼりにされていた隊長が、急に話に割り込んできたため、一瞬、全員が静まり返った。
まるで、パソコンの画面がフリーズしたかのように、時が止まったのだ。
しかし10秒後・・・何事もなかったかのように話は進んで行った。
「やっぱりさー、ツル先生よりスゲーよなー・・・!」
トラオが、あらためて感心したように話し出した。
「いんやー、ツル先生どころの話じゃねーぜー・・・バッハ・ハマコさんより、スゲーんべー・・・!」
「いんや、いんやーー、バッハ・ハマコさんどころの話じゃねーぞー・・・チャイコフスキー・キミコさんよりスゲーだんべなー・・・!」
「いんや、いんや、いんやーーー、チャイコフスキー・キミコさんどころの話じゃねーぜ・・・シューベルト・タイコさんよりスゲーんべー・・・!」
話は益々盛り上がった・・・が・・・チミー隊長は、まったくカヤの外だった。
!!!!!!!
「でもなー、ボクには神奈川県だんべー・・・!」
再び、置いてきぼりにされていた隊長が、貪欲にチャレンジしできたのだ。
一瞬、全員が静まり返り、またしてもパソコンの画面がフリーズしたかのように、時が止まってしまった。
しかし10秒後・・・何事もなかったかのように話は進んで行ったのだ。
「無視かよー・・・かまってくれよー・・・たんと、放置するなよーー・・・!」
隊長は、なんとか話に割って入いろうと必死にくらいついてきたのだが、結局、置いてきぼりをくらってしまった。
孤独になった隊長は、何故かラジオ体操第一を、大号令をかけながら一人で始めたのだ。
セルフ体操をする隊長を尻目に、造り上げられたチノビという幻影と、脚色した私のラッパに、誰も疑問をいだくこともなく、全員が爽快なストーリーに酔いしれていたのだ。
そして、クメのようにイナリ山ヒーロー列伝に名前を刻むことを、誰もが、夢見ていたのであるーーーーーーー・・・ルン・ルン・ルウーーーーーン!!!
バンビー。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス