第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(55)
「凡人たちよ、しっかりと心に刻むのだ・・・チノビは、汚ったねー野郎だ、卑怯者だ、プタ野郎だーーー・・・決して、負けるんじゃねーぞー・・・・ハートを熱く燃やすんだーー・・・いいか、凡人たちよーーー,ボクみたいにピックになるんさーねー・・・ウ・キョ・キョ・キョ・キョ・・・・ボクについてくるんさーね・・・ハ・キョ・キョ・キョ・キョーーーーン!」
やっと自分の出番が回ってきたことに喜んだ隊長は、1オクターブも高い裏声で、全員にブチカマしたのだ。
そして、勝ち誇ったように天高く拳を突き上げ、顔をジョロキアのように真っ赤に染め、過呼吸で今にも倒れそうにフラついていた。
すると・・・待っていましたとばかりに、ハツがヨイショをかましたのだ。
「いよー・・・さすが、さすが天才、イナリ山の誇り、チノビなんて隊長には神奈川県だんべー・・・隊長、軽く揉んでやってくだせーー・・・!!」
彼の一声で、隊長は今日もゴキゲン男子に変身したのだ。
「君たちは、幸せ者だぜー・・・ボクという天才を、身近で感じられるのだからな・・どうかなー、凡人たちに、ボクの偉大さが解るかなー・・・そうだんべなーー・・・そうだんべなー・・・レベルが違うかんなー、ウ・キョ・キョ・キョ・キョ・・・チノビは、ボクを恐れて逃げ出したかもしれんぞーーー・・・ハ・キョ・キョ・キョ・キョーーーーン・・・!」
超ゴキゲン男子のチミー隊長は、思いっきり胸を張り・・・何を考えたのか、突然、エビが跳ねるように後方へ反り返ったのだ。
ところが・・・地面に転がっている石に激突して、ゴツンという大きな打撃音がした。
・・・何故か・・・30秒ほど、時間が停止したように思えた。
やがて・・・起き上った彼の頭には、・・・東京タワーのような、巨大なトンガリ帽子が、みごとに出来上がっていたのだ。
そして・・・目には、大粒の涙が浮かんでいた。
「隊長、でーじょぶでがんすか、でーじょぶでがんすか・・・!」
ハツが声を掛けると、彼は口をきつく結んで、ゆっくりと頭をタテに振った。
「隊長、でーじょぶでがんすか、でーじょぶでがんすか・・・!」
隊長は泣きそうになりながらも、ぐっと涙をこらえていたのだ。
「大丈夫だよ、隊長は熱い男だぜー、天才だでー、こんなこと、屁とも思わねーよー、我々、凡人とはレベルが違うんさーねー、ホ・キョ・キョ・キョ・キョーーン!」
トラオが、吐き捨てるように言った。
「そうさーね、隊長はピックな男だぜー、ミスター・イナリ山だぜー、愛の戦士なんだぜー、拝んじゃうぜーー・・・みんなー、拝んじゃうぜー・・・!」
タケの言葉に、全員、思わず吹き出しそうになったが、必死になってこらえた。
そして、両手を合わせ、いつものように愛の戦士に向かって、深々と全員でヒレ伏したのだ。
!!!!!!!
その時だった。
上空から、パラパラと小石が降ってきた。
「アブナイ、みんな伏せるんだ・・・チノビだー、チノビだー・・・!」
隊長がトンガリ帽子を押さえながら、大声で叫んだのだ。
それに合わせるかのように、無我夢中で全員が地面に伏せた。
・・・・・沈黙が続いた・・・まったく、周囲の状況がつかめなかった・・・・・・・・ハツがパニクって、河川敷を転がっていた・・・・・・・不安と恐怖の時間が流れていた・・・・・・・・・・・・・・・!
「おい、じゃまだー、とっとと立ち去れー・・・!」
「ゴミども、早く消えろー・・・!」
不気味な声のする方角を見上げると、ガクランを着た高校生が二人、堤防に立っていた。
相当の愛煙家らしく、慣れた手つきでモクを吹かし、機関車トーマスのように、鼻から煙を吹いていたのだ。
たしか・・・あれは極悪人の、杉緒杉男と平田平太だ。
イナリ山では有名なワルで、誰もが知っている存在だ。
「おい、おめーら、早く消えろー・・・!」
「じゃまなんだよー、ゴミどもめー・・・!」
そう言うと、杉緒杉男が吸いかけのモクを、ポンと空中にハジいたのだ。
モクはスローモーションのように空中で放物線を描き、ユラユラと落下して行った。
!!!!!!!!
・・・・・「ア・チ・チ・チ・チ・・・ア・チ・チ・チ・チ・・・!」
落下地点は、隊長の頭の上だった。
「ア・チ・チ・チ・チ・・・ア・チ・チ・チ・チ・・・!」
彼は、あわててモクを払いのけた。
さすが・・・抜群のコントロールだ・・・!
隊長の東京タワーは、燈台のランプが点灯したかのように、みごとに赤く輝いていたのだ。
やっと復活を果たしたチミー隊長にとっては・・・まさに、まさにーーーー・・・「泣き面に蜂」だった・・・!
バンビー。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス