第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(56)
「隊長、出番でがんす、出番でがんすよー・・・軽くもんでやってくだせー、おねげーします、おねげーします・・・!」
ハツがチミー隊長に近寄り、震えながらウイスパーをかました。
・・・隊長!・・・隊長!・・・軽く、あそんでやってくだせー・・・!
・・・隊長!・・・隊長!・・・たんと、しつけてやってくだせー・・・!
隊員たちは、助けを求めるように懇願したのだ。
だが、彼の体は硬直して、まるで氷のように固まっていた。
「隊長、遠慮なんかしねーで、たんとくらわしてやってくんなーい・・・隊長、遠慮なんか、必要ございません・・・シメちゃいましょーー・・・!」
トラオの問いかけで、油の切れたロボットのように、ガクン・ガクンと、ローギアで口が動き始めたのだ。
「・・・こんら、プタ野郎ども・・・おめーらは卑怯者だ、汚ったねー野郎だ・・・おめーたちなんか、目じゃねーせー・・・わ・わ・わ・わかったかーーい・・!」
やっと発した言葉は、モスキート音のように小さく、独り言のようにしか聞えなかった。
おまけに、滑舌の悪さなのか・・・「目じゃねーぜ」が「目しゃねーせ」になっていて、最後は、たんとカミまくっていた。
団員たちは思わず吹き出しそうになったが、恐怖の中にも関わらず立ち向かって行った隊長の勇敢さに、パラパラと拍手を送ったのだ。
!!!!!!!!
「何か言ったか、そこのデブまんじゅう・・・!」
「ゴミたちは、さっさと消えろー・・・!」
そう言ったとたんに、杉緒杉男と平田平太が土けむりを上げながら、土手を一気に下ってきたのだ。
河川敷に降りた二人は、ホコリを払いながら、チミー隊長に近づいてきた。
「ガタガタ言ってねーで、早くお帰りよー・・・!」
「家で、おっぱいでも飲んでいろー・・・・キ・キ・キ・キ・キーーン・・・!」
二人は腕をグルグルとまわし、ポキポキと指の関節を鳴らしながら、圧力をかけてきたのだ。
・・・その時だった。
「小次郎、ヤブレたりーー・・・!」
隊長が、大声で叫びながら、二人に突進して行ったのだ。
さすが、愛の戦士、ミスターイナリ山・・・これが、奇襲戦法というやつか・・・・・・彼は天才・・・戦い方を知り尽くした男だったのだーーー・・・!
ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・・・10メートル程助走して、突然、空中高く跳び上がったのだーーーーー!
スゲーゾー・スゲーゾー!!・・・団員たちは、目をまるくして、その状況を見守っていた。
「ついに出たでがんすー・・・これは隊長の必殺ワザ・・・一度に二人を倒す・・・秘技ジャンピング・ボンバー・ダブルドロッブキック・ピカソだーーーー!」
ハツが興奮して叫んだ。
・・・だが・・・おおいに残念なことに・・・結果は無残なものだった。
1メートル手前で失速し、彼はドスンという音とともに落下してしまったのだ。
明らかに、普段からの練習不足・・・たんと踏切が甘かったのだ。
墜落した彼は、まな板のコイのように口をパクパクして、パニクリまくっていた。
そして、ギャーーーと一声叫んで、脱兎のごとく利根川の土手を這い上り、どこかへ消えてしまったのだ。
バンビー。
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス