第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(60)
私は、パニックに墜ちいっていた。
あせればあせるほど、クメの救助が進まなかったからだ。
青のジャーシを掴んで思いっきり引っ張ったのだが、スルスルと脱げてしまった。
それではと、ズボンをギュッと掴んだのだが、水の勢いで簡単に脱げてしまい、オニのようなボーボーが、丸出しになってしまった。
・・・私は最終手段として、頭をヘッドロックで決め、強引に岸辺へ引きずり上げたのだ。
・・・トッ・トッ・トッ・トーン・・・トッ・トッ・トッ・トーン・・・ガッキューーン、よし、決まったぞー・・・トッ・トッ・トッ・トーーーーン・・・!
私は、何度か石につまずきながらも、やっとのこと、陸上に引き上げることに成功したのだ。
クメの体重と、水を含んだ鉛のような衣服で、体力の消耗は極限状態だったのだ。
疲労でハーハー・ヒーヒー・ハーハー・ヒーヒーと肩で呼吸するのがせいいっぱいであったが、無呼吸状態のクメの姿をみて、あらためて緊急事態であることを認識した。
大量の水を飲んだのであろう・・・腹は、炭酸まんじゅうのように膨らんでいたのだ。
私はクメをうつ伏せにして、全体重を乗せて思いっきり逆エビ固めを掛けた。
ト・ト・ト・トーーン・・・ト・ト・ト・トーーーン・・・!
すると大量の水が、ゲボゲボと口から吐き出されたのだ。
今度は体を返し、あおむけにしてマウス・ツー・マウス法で人工呼吸を開始したのだ・・・が、口が馬鹿デカいため、空気がスースーともれてしまった。
私は慌てて両サイドを手で塞ぎ、思いっきり空気を吹き込んでやったのだ。
そして今度は、ろっ骨が折れるくらいの力で心臓マッサージを行った。
この時、図書館で勉強した「キミにもできる、救命救助」という本が、とても役にたったのだ。
!!!!!!!
・・・・・どのくらい、時間が経過したのだろうか。
長かったような、短かったような・・・・・
何度目かの心臓マッサージをしていると、ゲボッっという音と共に、クメが呼吸を始めたのだ。
半信半疑で、クメの口元に耳を近づけると、呼吸音がした。
ウーウーと水牛みたいに唸りながら、確かに呼吸をしていたのだ。
よかったー、クメちゃん、生き返ったぞー・・・!
よかったー、クメちゃん、生き返ったぞー・・・!
私は思わず立ち上がり、バンザイ三唱をしたのだ。
バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ・・・・・!
バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ・・・・・!
バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ・・・・・!
その瞬間、安堵したせいなのか、全身から力が抜けて、コンニャクのようにフニャフニャと腰砕けになり、その場所に座り込んでしまった。
・・・・・だが・・・まだ仕事が残つてる・・・・・・・・・しっかりすろー・・・まだ仕事が残っているんべーーー・・・・・・・立ち上がれー・・・立ち上がるんだーー・・・!
そうなのだ・・・体を温めるために、陽当たりの良いところに一刻も早く移動しなければならないのだ。
幸運なことに、今日は小春日和の穏やかな天気だった。
それに、北側の岩壁に移動すれば、風も当たらず陽あたりが良さそうだった。
私は、ふたたびクメの両足をつかんで引きずったのだが・・・案の定・・・せっかく着用させたズボンとパンツが、またしてもズルズルと脱げてしまい、オニのようなボーボーが露出してしまった。
気を取り直して、上着のジャージーを掴んで引っ張ったのだが、やはり簡単に脱げてしまい、上半身が丸出しになってしまった。
そんだ、そんだ、やはりここはヘットロックだんべー・・・!
・・・ガッキーン・ガッキーーン・ガッキーーーン・・・!
グイーーーーン、グイーーーーン・・・よし、決まったぞー・・・・・・トッ・トッ・トッ・トーーーーン・・・・・!
私は両手でしっかりとロックして、フラつきながらも移動を開始したのだ。
!!!!!!!
移動した所は、陽なたぼっこには最適な場所だった。
太陽の暖かさを肌で感じることが出来、それに岩壁を背にしたことで、風も防げた。
私は枯草を集め、その上にクメを寝かせ、流木を組んで濡れた衣服を乾かしたのだ。
しかし、なんと馬鹿デカイ衣服なんだろうか・・・!
まるで、ガリバーのようではないか・・・!
あらためて、グレイトなクメに感心し、同時に、たんとあきれてしまった。
・・・クメと書いてある青いジャージが、時折のんきそうに風で揺れていた・・・
河川敷の巨岩や周囲の風景、それらすべてが一体化し、何故かアリスの世界に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥ったのだ。
そして、救助活動をやりきったという満足感からなのか、快い疲労感に包まれながら、私は、ちょっとだけ眠りに落ちてしまったのだ。
トッ・トッ・トッ・トーーーーン・・・ムニャ・ムニャ・ムニャーーーン・・・!
トッ・トッ・トッ・トーーーーン・・・ムニャ・ムニャ・ムニャーーーン・・・!
バンビー。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス