第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(61)
 ヴァスコ=ダ=ガマが喜望峰を通過し、インド航路を発見したのは西暦1498年のことである。
コロンブスの西回航海に対して、東回でインドのカリカットに到着したのだ。
彼は、開拓者であり偉大な冒険家だ。
南部海岸のジュネスの役人の子として生まれ彼は、航海者としての実績は不明であるが、当時、各国が世界の覇権を獲得しようと、東奔西走をしていた時代に、海の航路を開拓したことの功績は大きい。
図書館でガマについての伝記本を読んだ時、おおいに心が高揚したことを覚えている。
トッ・トッ・トッ・トーーーーーン・・・トッ・トッ・トッ・トーーーーーン!
!!!!!!
私は、今、あらためて自問自答したのだ。
そうだ、そうなのだ・・・私も、トゥルー・アドベンチャーーではないか。
あくなき好奇心と冒険心に満ちあふれた・・・スーパー・イナリ山少年なのだ。
この時、真のアドベンチャーとして、解けないナゾに再度チャレンジして、勇敢に攻めてみようと決意したのだ。
それは、みごとなまでのボリューム感、光沢のあるブラック、堂々とした存在感、男らしく三拍子そろったクメのボーボーである。
こんなにも荒々しく、たくましい物体なのに、何故か1品足りないように思えたのだ。
それは、心に刺さったトゲのように、私にチクチクと問いかけていた。
・・・何かが足りない、何かが足りないぞー・・・早くナゾを解いてくれー、早くナゾを解いてくれー・・・君はトゥルー・アドベンチャーだんべーなー・・・!
私は、闇の声に背中を押され、渋々と・・・いや好奇心の塊で・・・目を、ギンギン・ランラン・カンカーーンと輝かせながら、横で静かに眠っているクメのパンドラの箱にそっと近づいたのだ。
そして、ヴァスコ=ダ=ガマのように、未知の大陸に向かって前進したのだ。
もう、後戻りはできない・・・後戻りはできないんべー・・・・!
・・・モグラのように・・・少しずつ少しずつ掻き分けて・・・慎重に進んだのだ。
だが、クメのボーボーは広大だった。
あのガマのように、なかなか喜望峰を発見することはできなかったのだ。
たぶん、極寒のタイガの中で小さくなって存在しているのであろう物体・・・・・・それはどこだ、どこだー、どこにあるんだよーーーー・・・!
私は、苛立ち、あせった。
もう、時間がないぞ、時間がないぞー、ゾウさーーーーん・・・!
とうとう、私は、勝負に出たのだ。
強引にモズクを掻き分け、エイ・エイ・エイ!と気合を入れて、邪魔者を思いっきり引き千切ったのだーーーーー・・・!
・・・が・・・その瞬間、パチ・パチ・パチ・パチ・パチ・・・!と、いくつもの星が頭上で瞬き、アクション映画のように、後方へブッ飛ばされたのだ。
まるで空中浮遊をしているような、天の川の中を漂うような、三途の川に浮かんでいるような・・・たくさんの空間を、光速で突き抜けて行ったのだ。
・・・鼻に手を当てると・・・真赤な鮮血がタラタラと垂れてきた・・・
グワーーン、グワーーーン、トッ・トッ・トッ・トーーーン・・・!
グワーーン、グワーーーン、トッ・トッ・トッ・トーーーン・・・!
・・・見上げると、クメが仁王立になっているではないかーーー・・・!
ウソだろう、ウソだろう・・・ネコふんじゃったーのねーー・・・!
ネコふんじゃったのねーーーーー牛乳屋のギュウ五郎さーーーん・・・!
そうなのだ、そうなのだ・・・みごとに、クメのメガトンパンチをくらったのだ。
いつの間に目をさましたのだろうか・・・クメは大粒の涙を浮かべ、震えながら拳を握りしめてファイティングポーズをとっていたのだ。
「わりー、わりー、ちょっとよー、ケバにゴミが付いていたからよー、クリーニングしようとしただけなんさー、悪く思わんでくれよー・・・!」
右手で鼻血を押さえながら、とっさにウソ八百をならべたのだが、クメの怒りはそう簡単には収まりそうになかった。
「怒らしちゃったかなー、かんべんなー、かんべんしてくれよー・・・かんべんなー、かんべんなー、かんべんなーー・・・!」
私は、クメの怒りを鎮めるために、何度も何度も土下座をしたのだ。
しかし、謝れば謝るほど、怒りを増幅させてしまったように思えた。
!!!!!!!!!!
クメは相変わらず目に大粒の涙を浮かべ、震えながらファイティングポーズを取っていた。
・・・・・しばらくの間、沈黙の時間だけが流れて行ったのだ・・・・・
・・・・・この気まずさ、バツの悪さ、せつなさ・・・・・・・・・
私は膝小僧を抱えたまま、やりきれない時間を利根川の河川敷で過ごすことになったのだ。
!!!!!
P.S
だが・・・あのナゾは・・・最後まで解くことができなかった。
こんなにも真剣に探したのに、めざす物体を発見することができなかったのだ。
何故だ、何故だ、何故なんだーーーー・・・!
アイツは本当に、男なのだろうか・・・・・?
いや・・・やっぱり男だろう・・・あの、みごとなまでのボリューム感、光沢のあるブラック、堂々とした存在感・・・三拍子そろったボーボーを見れば、もはや疑うことはあるまい。
・・・私の脳裏には、モヤモヤだけが残ってしまい、ヴァスコ=ダ=ガマになることができなかった事の虚しさに、いつまでも心がさいなまれていたのだった。
バンビー。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス