第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(68)
「ク・ク・ク・ク・・・ク・ク・ク・ク・・・ク・ク・ク・ク・・・!」
「クィ・クィ・クィ・クィ・・・クィ・クィ・クィ・クィ・・・・・!」
アンちゃんの笑い声が、何故か「キ」から「ク」に変わった。
「ク・ク・ク・ク・・・ク・ク・ク・ク・・・ク・ク・ク・ク・・・!」
「クィ・クィ・クィ・クィ・・・クィ・クィ・クィ・クィ・・・・・!」
そして、ロボットのように、カックン・カックンと・・・・・ラップを刻むかのように、床から立ち上がったのだ。
彼は、しばらく静止していたが・・・やがて周囲をキョロキョロと見回し、突然、ラジオ体操第一を始めた。
「1・2・3・4・5・6・7・8・・・1・2・3・4・5・6・7・8・・・!」
自分から号令をかけ、鳥が宙を舞うように華麗に体操を始めたのだ。
この不可解な行動、異様な雰囲気・・・・・団員たちが唖然として見守る中、今度はラジオ体操第2へと突き進んていった。
「1・2・3・4・5・6・7・8・・・1・2・3・4・5・6・7・8・・・!」
だが、中盤に差し掛かったころ、いきなり体操を中断してしまったのだ。
キョロリ・キョロリ・ジーーー・ジーーー・・・・・!
キョロリ・キョロリ・ジーーー・ジーーー・・・・・!
頭をクルクルと何度か回転し、5度目でピタリと止まった。
・・・・・その視線は、ミカン箱の上にいるハツの姿を捕らえていたのだ。
二人はしばらく見つめ合っていたが・・・ハツが視線をはずした瞬間、「ハーーーイー」と叫びながら、彼の側頭部に飛び回し蹴りをクラワしたのだ。
すると、ハツの頭はハンマー投げの球のように、ギューンと伸びて、体とともに空中に飛び出して、板塀に「バキッ!」とメリ込んだのだ。
!!!!!!!!!
「ケ・ケ・ケ・ケ・・・ケ・ケ・ケ・ケケ・・・ケ・ケ・ケ・ケ・・・!」
「ケッ・ケッ・ケッ・ケッ・・・ケッ・ケッ・ケッ・ケッ・・・・・!」
なんと、今度は笑声が「ク」から「ケ」に変わったのだ。
この変化は、いったい・いったい・・・何を意味するものなのだろうか。
「ケ・ケ・ケ・ケ・・・ケ・ケ・ケ・ケケ・・・ケ・ケ・ケ・ケ・・・!」
「ケッ・ケッ・ケッ・ケッ・・・ケッ・ケッ・ケッ・ケッ・・・・・!」
不気味さは、ますます深まるばかりであった。
壁に張りついて震えていた隊長は、ズボンの裾から大量の水を流がしていた。
これは完全に、失禁している証拠だ。
「オイ、おめーたち、話は聞いたぜ・・・・・オレ様は、弟子をとらないことにしているんだが、かわいい弟からのたっての願いだ・・・・・仕方ねー、全員まとめて弟子にしてやるぜ・・・・・だがよー、空手の道は厳しいぜ・・・・・生半可な気持ちじゃイケネエーぜ・・・わかったかー・・・コ・コ・コ・コ・コケコッコーーー!」
アンちゃんが重低音を響かせながら、初めて口を開いた。
そして・・・・・ゆっくりと、隊長を指差したのだ。
「おい、そこのデブ、何か質問があるかのーー・・・のーーーのーーー・・・!」
突然、話を振られた隊長の目は、錦鯉のように泳いでいた。
「のーーー、のーーー、のーーー、そこのおデブさんよーー・・・!」
追い詰められた隊長は、エビのように反り返り、大きく深呼吸をした。
「あのー、あのー、あのー、あのー、あのー・・・・・!」
極度の緊張からか、「あのー」ばかり言っていて、次の言葉が出なかった。
「あのー、あのー、あのー・あのー、あのー・・・・・!」
同じ言葉を繰り返す隊長に、アンちゃんが少しキレた。
「この、デブまんじゅう、ナメてんのか、いいかげんにしろよー、のーー、のーー!」
隊長は、ますます追い詰められていった。
「あのー、あのー、あのー、あのー・・・・・帯なんですがー・・・・・帯がゴールドじゃなくて、イエローに見えるんですけんど、あのー、あのー、あのー、あのー・・・ボクの錯覚でしょうか・・・!」
思わず出てしまった言葉を、あわてて取り消すかのように両手で口を押えた。
たしかに、腰に巻いている空手帯は黄色に見えた。
ハツの言うような、ピカピカのゴールドではなかったのだ。
「あのー、あのー、あのー、あのー・・・やっぱり、ゴールドですよね、ニャツ・ハッ・ハ、ニャツ・ハッ・ハ、・・・か、ニャー・・・!」
隊長が発言を撤回した瞬間、アンちゃんの必殺脳天蹴りが火を吹いたのだ。
「ゴツン!」という衝撃音がして・・・・・彼はフラダンスを踊っているかのようにヨタヨタとフラつき、ふたたび顔面から牛糞にダイブしてしまったのだ。
・・・・・隊長の頭には、オニのようなコブが2個、形成されていた。
バンビー
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス