第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(69)
なんと、なんと、トッ・トッ・トーーーーーン・・・!
驚いたことに、こんなちっぽけなイナリ山にも、「あしながおじさん・ストーリー」が存在したのだ。
それは俄に信じがたい事・・・・・しかも、驚愕すべきは、一番身近な同級生に起きたことだったのだ。
イナリ山の伝搬スピードは、毎時2キロメートル・・・ちょっとした噂話でも、一晩あれば、すべての村民に知れ渡ってしまう。
二晩あれば、すっかり脚色されて、とんでもない話になってしまうのだ。
かつて、正直屋の権さんがカネコさんとケンカをして家から追い出され、外で一晩明かしたことがあった。
噂話はツル大先生によりみごとに脚色されて、二晩目にはマグロ漁船で働き、三晩目には、岡本本家の清酒キンカメを飲み過ぎて漁船から追放され、今は、世界放浪の旅に出ていることになっていた。
このイナリ山では、まさにスーパーストーリー・・・ウルトラドキュメンタリーに超変体するのだーーーーーー・・・!
!!!!!!!!
「ハツのあんちゃん」による唐突乱入事変の三日後、・・・それは何の前触れもなく、我々の秘密基地に伝わって来た。
ニュースを早々にキャッチしたチミー隊長は、顔をジョロキアのように真っ赤に染めて、ミカン箱の上でD-51のように息を吹き上げながら、
さっそうとブチかましたのだ。
「諸君、すごすぎりぞー・・・すごすぎるぞー・・・すごすぎるんべー・・・すごすぎる出来事がおきたんべーなー・・・ク・ク・ク・・・ハ・ハ・ハ・・・ヒヒヒ・・・パ・パ・パ・・・ム・ム・ム・・・・・?」
隊長は、モノノケに取りつかれたかのように叫び出し・・・やがて、過呼吸でひっくり返ってしまった。
床の上でピクピクと痙攣して、越前カニのように口から大量のアワを吹いていた。
何がスゴすぎるのか、何がスゴすぎる出来事なのか・・・・・まったく、伝わってこなかった。
・・・・・それを横目に、今度はハツがはりきって登壇したのだ。
「タケのあんちゃん」の乱入以来、すっかりと自信をつけたハツは、余裕をかましながら、いつものように唄いはじめた。
「♪♪皆の衆 皆の衆 嬉しかったら腹から笑えー・・・・・♪」
彼は手踊りをまじえながら、作詞 関沢新一 作詞 市川昭介 歌 村田英雄をもちまえの歌唱力で、ウナリはじめたのだ。
「♪♪悲しかったら 泣けばよい 無理はよそうぜ 体に悪い・・・・・♪」
しかも、その指は白鳥の湖のように、しなやかに動いているではないか・・・!
これは、カオス・・・まさにカオス・・・カオス劇場の幕開けだんべー・・・?
カニのようにアワを吹く隊長・・・・・その横で、村田英雄をウナリまくるハツ・・・・・それを無視する団員たち・・・・・?
しかも、彼は自信満々で、二曲目に突入したのだ。
「♪♪月がわびしい 路地裏の 屋台の酒の ほろ苦さ・・・♪」
これは定番の、作詞 門井八郎 作曲 長澤義司 歌 三波春夫の「チャンチキおけさ」だ。
「知らぬ同士が 小皿叩いて チャンチキおけさー・・・♪」
待ってましたとばかりに、これを合図に全員が皿を叩き始めたのである。
しかも、延々と同じフレーズを繰り返したのだ。
「知らぬ同士が 小皿叩いて チャンチキおけさ・・・♪」
「知らぬ同士が 小皿叩いて チャンチキおけさ・・・♪」
何かに取りつかれたかのように、しかも飽きることもなく、皿叩きは続いた。
・・・・・いったい、チミー隊長は何を伝えたかったのだろうか・・・?
・・・・・何が、スゴすぎる出来事だったのだろうか・・・?
相変わらず、隊長は越前カニのように床に寝ころび、大量のアワをモクモクと吹いていた。
そして団員たちは、それを気にすることもなく、ハツの「チャンチキおけさ」に合わせて、小皿を叩きまくっていたのである。
バンビー
来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス