第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(76)
イナリ山七大賢人の一人であるサクコ婆さんは、別名「万里眼バーバン」と呼ばれている。
遠く未来を見渡す力は、千里どころか地球の裏側までに及び、神羅万象をいとも簡単にあやつることが出来る超人なのだ。
全ての情報は「万里眼バーバン」に集まり・・・・・イナリ山村民の運命は、まさにサクコ婆さんの手に握られていると言っても過言ではない。
何を隠そう・・・その情報元は・・・上毛新聞とイセサキ広報である。
毎日、記事を一字一句完璧に読み取り、膨大な情報量を蓄積し、科学的分析のもと、イナリ山村民の安全を、日夜、守っているのだ。
たとえ一度たりともイナリ山の結界に入り込めば、「万里眼バーバン」により即座に解析がなされて、ホラ吹き将軍のツル先生により、時速50キロメートルのスピードで村中に拡散して行くのである。
村民は、各家のバラックに逃げ込み、「万里眼バーバン」の指示が出るまで、亀甲縛りの練習をしながら、籠城してしまうのだ。
まさに、ヤドカリとテッポウ魚のように、両者は絶妙なバランスを保ちながら、共生しているのである。
「住み良い村」ランキング日本1位は、このようにして築かれてきたのだ。
この未知のパワーは、ニュートン力学では解明できない。
イナリ山七大賢人だけに許された、ヒューストントン力学によってのみ、解き明かすことができるのだ。
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サクコ婆さんは、太いアカザの杖をつきながら、毎日、イナリ山村内を隅から隅まで巡回しているのだが、第一チェックポイントは正直屋ストアーである。
「ホイ・ホーイ、らっしゃい・らっしゃい、新鮮だよ、うんめーよ、こたえられねーよ正直屋の野菜を食べたら、他のもんは食えねーよー・・・みんなのアイドル権ちゃんが言うんだから、間違いねーんべー・・・あんたとオレの合言葉、正直屋で逢いましょう・・・いいねー、いいねーーー、いいねーーーー・・・・・!」
正直屋では、店主の権さんが口角にアワを飛ばしながら、客呼びをしていた。
これはいつもの見慣れた光景で、店主の自己満足が完結するまで続くのだ。
「いいねー、いいねーーー、いいねーーーーー・・・勉強しちゃうよ、勉強しちゃうよ・・・・指名してよ、指名してよーー・・・ご指名しちゃってよーーー、指名料なんていらないよ、権ちゃんは、勉強家だかんねー・・・・イッちゃうよ、イッちゃうよ、イッちゃってまーーす・・・・・!ク・ク・ク・ケ・ケ・ケ・・パパ36・ママ81だかんねー・・・・・・!」
権さんは、全力で一人モリアガリを繰り返したあげく、やはり、いつものように酸欠でバタンと倒れてしまった。
地面に倒れてピクピクと痙攣をしている店主の元に、サクコ婆さんが近づきアカザの杖を振り子時計のように動かして、呪文を唱えたのだ。
「オイ、権の字・・・目をさませー・・・しっかりせんかーーー・・!」
そう言うと、いきなりアカザの杖を振りかざして百叩きを始めたのだ。
「ゴン・ゴン・ゴン・ゴーーーーーン・・・・・!」
「ゴン・ゴン・ゴン・ゴーーーーン・・・・・・!」
すると、権さんがのっそりと起き上がったのだ。
「いいねー、いいねーーー、いいねーーーーー・・・勉強しちゃいよ、勉強しちゃうよ・・・・指名してよ、指名してよーー・・・ご指名しちゃってよーーー、指名料なんていらないよ、権ちゃんは、勉強家だかんねー・・・・イッちゃうよ、イッちゃうよ、イッちゃってまーーす・・・・・!」
店主は、なんとか正気に戻ったようだった。
「おめー、何か悩み事があるなー・・・顔に書いてあるぞ・・・!」
サクコ婆さんにズバリと指摘さされた権さんは、フニャフニャとその場に座り込んでしまった。
「実は、実は、週刊ジツワ・・・・・・!」
店主が口を開いた瞬間、サクコ婆さんが杖を天高く持ち上げたのだ。
「ナニ・ナニ・ナーニ・・・それ・なあにー・・・・・・・・!ナニ・ナニ・ナーニ・・・それ・なあにー・・・・・・・・!わかった・・・全部言うな・・・先日出会った、T大の先輩の素性を知りたいのだな・・・!」
「ヒョコーーーーン・ピヨ・ピヨ・ピヨ・・・・・さすが万里眼バーバン・・・すべてお見通しなのですねーーー・・・・・!」
権さんは、万里眼バーバンの神通力に驚愕して後方にひっくり返ってしまった。
「その男の名は、華恋小路優造・・・T大工学部卒で、一代でG-プロジェクトという大企業を築き上げた経営のカリスマじゃ。イナリ山へは、孫娘のキオナを探しにやって来たのじゃ・・・ピヨ・ピヨ・ピヨーーーン!」
権さんは目をメダカのように丸くして、サクコ婆さんの言葉をゆっくりと繰り返したのだ。
「ナニ・ナニ・ナーニ・・・それ・なあにー・・・・・・・・!
ナニ・ナニ・ナーニ・・・それ・なあにー・・・・・・・・!
G-プロジェクト、経営のカリスマ、孫娘のキオナを探しに・・・・・?
G-プロジェクト、経営のカリスマ、孫娘のキオナを探しに・・・・・?
・・・・うおー、すげーぞ・すげーぞー、大変だ、大変だ・大便だーーーーー・・・・・!」
・・・・うおー、すげーぞ・すげーぞー、大変だ、大変だ・大便だーーーーー・・・・・!」
突然、絶叫した店主は、震えながら全速力でトイレに飛び込んだのである。
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来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス