第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(83)
晦日の押し迫ったころに、奇妙な事件が発生したのである。
それは、うす暗い小道を下校していくと、突然、粘土の高い牛糞が頭上から降ってくるという悲惨なものだった。
被害者は2人で、5年生のテツオとクニオだった。
当時、彼等はスケ男と呼ばれていて、今でいうチャラ男であった。
スケ男は、スカートめくりをしたりしていて、女子からは嫌われていたが・・・とんだ勘違い野郎たちで、イナリ山小では人気者であると自負していたのである。
そんなスケ男が、粘土の高い牛糞を全身に浴びせられたのだから、あっという間に学校中に広まり、生徒からは笑い者になってしまった。
しかも連続テレビ小説のように、4回も続いたのである。
ソフトボールで言えば、コールド負け寸前であった。
彼等は、なんとかホシを上げようと必死になったが、まるで忍者のように気配を消してしまうのだそうだ。
おまけに、かなりの腕前らしく、マトを100%外さなかった。
ビシャビシャの牛糞を浴びると、2日間は動物の匂いが消えない。
だから、被害にあったことを隠しても、すぐにバレてしまうのだ。
下級生イジメへの仕返しなのか、隣接の小学校からの挑戦か、中学生に睨まれたのか・・・だが、5年生に仕返しをするような元気のある者は見当たらなかったし、それに、隣接の学校からわざわざ越境してまでケンカを売ってくる奴もいない。
ましてや、中学生は小学生に手を出さないという、暗黙のルールがった。
様々な憶測が駆け巡ったが、誰も真相をつきとめることができなかったのである。
!!!!!!!!!
当時、私は、この事件を客観的に分析していた。
まず、ホシは、5年生のテツオとクニオを完全に狙っていること。
彼等の普段からの行動から推測すると、硬派ではなく、完全なスケ男であること。
スカートめくりをして、女子からは嫌われていること。
ヘアーをバッチリ決め込んでイケメンを気ぞってはいるが、現実は、ブタメンであることである。
ここから導かれる答えは・・・もしかして、犯人は女性かもしれない。
三角関係による痴情のもつれか・・・はたまた、ドロドロの怨恨だろうが・・・?
この結論にいたったのは、当時、イナリ山の主婦の間で熱烈な支持を得ていた昼メロの影響によるものだった。
だが、小学5年生が、三角関係による痴情のもつれなどに関わることがあるのだろうか。
しかも、彼等はブタメンである。
私の推理は、行き詰ってしまったのである。
!!!!!!!!!
しかし、ひょんなことから、この事件の真相を解くカギを発見したのである。
それは、同じクラスのカズコの一言からであった。
「これは・・・果物のような甘い匂いがする・・・・・?」
実は、事件現場からサンプルを採集しておいたのだ。
彼女は「オニの鼻」と呼ばれ、嗅覚がシェパードのように優れているのである。
「・・・農協の配合飼料のほかに・・・僅かに、果物が混入している・・・!」
オニの鼻は、・・・みごとに・・・断言したのである。
「キ・キ・キ・キタ・キタ・・・・北風小僧のカンタローくーーーン・・・!」。
ピンピンに、来てしまったのである。
「ウ・キョ・キョ・キョ・キョーーーン・・・ウ・キョ・キョ・キョ・キョーーーン・・・キ・キ・キ・キタ・キタ・・・北風小僧のカンタローくーーーン・・・!」
私は、六方を踏みながら、目的地へと一目散に駆け出したのであった。
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来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス