第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(84)
それは、鬼の鼻と呼ばれるカズコが発した、何気ない一言からであつた。
「・・・これは・・・農協の配合飼料のほかに・・・・・甘い果実の匂いがする・・・!」
私は、甘い果実という言葉に、ピンピンと来たのだ。
そうだ、もしかして、もしかして、もしかしてーーーー・・・!
事件を解くカギは、案外近くにあったのかもしれないのだ。
そう思った瞬間、私の体は北へとロックされたのである。
大きく六方を踏みながら、全速力で走りだしたのだ。
・・・そう・・・目的地は・・・なんと・なんと・とっとっとーーーん・・・!
正直屋の牛小屋だったのである。
そこでは、毎日、売れ残った果物を、牛に与えていたのだ。
だからなのか、牛舎だというのに、いつも甘い匂いが立ち込めている不思議な空間だった。
もっとも、その上前をハネる形で、少年ホースの団員たちは食料を横取りしていたのだが・・・!
!!!!!!!!!!!!
到着すると同時に、壁にかかった鳩時計が、ピポピポと4時を告げたのである。
私の心臓は、これから起こるであろう事件を想像し、D-51のように猛烈な勢いで鼓動を繰り返していた。
そして・・・そっと中をのぞくと・・・・・
名前の付いたアカ・シロ・マダラの三頭の牛が、呑気に果物を食べていた。
中からは、いつものように甘いパフェのような匂いが漂って・・・・
牛は尻尾でハエを追い払いながら・・・・・食べ飽きた1頭は、反芻を繰り返していた。
この光景は・・・いつもと変わらなかった・・・・・
よかった・・・よかった・・・何もなかった・・・!
私は安堵の表情を浮かべ・・・なんとなく、裏側へと足を運んだのである。
だが、その瞬間、汚水を溜めておくプールに人影を発見したのだ。
私の体は硬直し、再び心臓が猛烈な勢いで鼓動を開始したのである。
!!!!!!!
そっと、背後から観察すると・・・・・・
該者の後頭部に、数字の1の傷跡を発見したのだ。
まさか、まさか、まさかーーーーー!
あの1の数字は・・・毎日、近くで見ているものだ。
人影は、空き缶を利用して、バケツに汚水を移し替えていた。
思い切って私が近づくと、それを察知したのか瞬間的に茂みに姿を消したのだ。
・・・一瞬の静寂・・・何事もなかったかのような時間が流れていった。
私は、意を決っして、該者に問いかけたのだ。
「おい・・・ロクだろー・・・そんなところに隠れていないで出て来いよ・・・何もしねーよー・・・安心して出てこいよー・・・・・!」
人影は、しばらくの間、ためらってはいたが、とうとう観念したのか、モゾモゾとしながら、私の前に姿を現したのだ。
「やはり、オメーかー・・・なんでこんなことーしてんだよー・・・!」
私の質問に、彼はしぶしぶと答えた。
「仕返しをしているんだよー・・・!」
「仕返し・・・?・・・なんか、イジワルでもされたんきやー・・・?」
「ちげーよー・・・ユキコちゃんに、スカートめくりをするんべー・・・だから、懲らしめてやるんさ・・・5年生のテツオとクニオが許せねー・・・あいつら、上級生だからってよー・・・エバるんじゃねー・・・!」
やはり、犯人は同級生のロクだった。
後頭部にある数字の1の傷跡は、義母のキミエさんが投げたカマが突き刺さってできたものだ。
「おめーよー・・・もう、4回も復讐したんだんべー・・・この辺で、止めとけよー・・・そんな事を続けたって、誰も喜ばねーぞー・・・!」
ロクは口を尖らせて、必死に何かを語ろうとしていたが、言葉にならずにポロポロと涙を流すばかりであった。
!!!!!!!!
P.S
その後、頭上から糞尿が降ってくるという事件は、ピタリと止んだのである。
再び、イナリ山に平和がおとずれ、退屈な時間が流れていった。
しかし、人の感情というものは計り知れないものである。
ロクは、義母のキミエさんとの一件で憎しみを抱えているものだと思っていたが、何故か、ユキコに恋心を抱いていたのである。
やがて、二つの運命の赤い糸は複雑に交差を繰り返し、結びつくのである。
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス