第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(85)
チミー隊長は、今日も元気である。
3月の定例ミーチングに出席すると、彼はいつものようにミカン箱に上り、父親の権さんが村会議員に立候補したときに使用した必勝ハチマキを大胆にかぶり、口角に思いっきりアワを吹かして、熱弁をふるっていた。
そして、唐突に叫んだのだ。
「諸君、今日からボクのことは軍師と呼んでくれ・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・!いいかー、軍師だー、わかったかー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・・・・!」
すると、待っていましたとばかりに、予定通りにタケがはやしたてた。
「イイゾー、軍師・・・ステキー、軍師・・・すんばらしー、軍師・・・!」
「軍師さま―・・・軍師さまー・・・アンタは本物の軍師だー・・・!」
私も、遅れをとるまいと調子をこいて持ち上げたのだ。
「でもよー・・・軍師って、何だんべーなー・・・なー・なー・なー・・?」
ハツが、素朴な疑問を口にした。
「おめーは、あいかわらずのアホだなー・・・ハカチェよ・・・この、ヘチマ野郎に説明してやってくんねーかー!」
隊長はうんざりとした顔で、私にふってきた。
「そうだな・・・軍師っていうのは、大将の戦略指揮を助ける役目を担う人だ、軍の参謀、策略家、策士だな・・・ちなみに、武田信玄の軍師で山本勘助という人物が有名だんべ。」
チミー隊長は、ニタリと笑いながら胸を張った。
「まさにボクだんべー・・・軍師になるために生まれてきたようなもんだなー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョーーーン・・・イナリ山の軍師・・・それが、この、ボクなのさー・・・ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョーーーン・・・!」
タイミング良く、会場からパラパラと拍手が沸き起こった。
「いいぞー、軍師・・・あんたは天才軍師だー・・・ホンモノだー・・・スキスキ軍機・・・シンビレルー・軍師ちゃんー・・・!」
ハツは何かに興奮したのか・・・絶叫を繰り返しながら、ひっくり返ってしまった。
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チミー隊長は、魅惑の低音で、団員たちに語りかけたのである。
「今から諸君に、作戦を伝授する・・・耳の穴をでっかくして聞いてくれ・・・!」
それは、以前、利根川の秘密基地で高校生のヤマとトラにこっぴどい目にあったことへのリベンジであった。
「諸君、利根川事変のことは忘れてはいないだろう。
あの時は、ボクもうかつだった。
完全に、油断をしていた。ピッ・ピッ・ピッ・ピョーーン・・・!」
それは、油断ではなく、まさに実力不足であった。
隊長は、マナ板のコイのように口をパクパクして、戦わずに敵前逃亡をしていたのだ。
「ボクは軍師として、考え抜いたのだ。それが、サルカニ作戦だーーー・・・・・いいか、今から役割分担を発表する。ウスはボクだ。子供のカニはトラオ、ハチはハカチェ、焼きクリはタケ、牛糞1はハツ、牛糞2はロクだ・・・・・どうだ、すげー作戦だろう・・・一人の力は、たかが知れている。だから、全員の力を合わせるのだーーー・・・ウ・ピョ・ピョ・ピョーーーーン・ピーーーピーーーー・・・!すべては、この軍師の手中にある・・・この作戦は、完璧だーーー・・・いいか・・・今から、利根川事変のリベンジに向かうぞーーー・・・野郎どもーーー、カチドキだー・・・エイエイオー・エイエイオー・エイエイオー・・・・!」
チミー隊長は、一人で盛り上がっていた。
昔話からパクッた作戦に、完全に酔ってしまったのである。
彼は、ここで全精力を使い切ってしまったようで、カチドキを上げると、魂の抜けた夢遊病者のようにフラつき、ミカン箱から地面にダイブしてしまった。
・・・完全に、イッテしまったのである。
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一方、問題になったのは、牛糞1と牛糞2であった。
牛糞はチミー隊長の家で調達予定であったが、利根川の秘密基地までは、あまりにも遠く、運搬に難があった。
タケの提案により、現地で団員たちの老廃物を直接使用することになったのであるが、はたして、それは可能なのかどうか不安ではあったが・・・?
とにかく、利根川事変のリベンジに向けて、天才軍師を先頭に出発したのである。
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来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス