第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(87)
秘密基地に到着したのは、午後2時30分頃であった。
この日は曇天で、利根川は冬渇状態で、いつもの流れの勢いはなかった。
堤防を歩いているとガサガサと落ち葉の踏む音が響き、もの悲しさが漂っていた。
そんな中、隊長だけは、たんと元気だったのである。
「いいか野郎ども、絶対、秘密基地を奪還するぞー・・・ヤマとトラを百叩きの刑にしてやるんべー・・・そのために、サルカニ作戦を実施する・・・この軍師様の指示に従えば、勝ったも同然だ・・・諸君は、ミスター・パーフェクトと呼んでくれー・・・ウヒョ・ウヒョ・ウヒョ!」
チミー隊長は、ますますゴキゲンだった。
「サルカニ作戦は、考えに考え抜いた作戦だ・・・大船に乗ったつもりでついてくるんさーねー・・・キョッ・キョッ・キョッ・・・!」
彼は奇妙な声を発すると、ミケネコのように、そっと大木の陰に隠れたのだ。
「隊長、もう始まっているんかい・・・!」
ハツが、頭をかきながら質問をした。
「オメーは、吞気だなー、始まるも何も・・・て言うーかー、始まってんだよー・・・この、あほんだらー・・・百叩きの刑にするぞー・コンニャロメー・・・・!」
話の腰を折られた隊長は、思いきり大木にキックをした。
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堤防の藪の中から隠れて見下ろすと、河川の中央にある3メートル程の巨岩の上で、ヤマとトラが熱心にモクを吹かしていた。
イルカのバブルリングのように、プカプカと器用に上空に打ち上げていたのだが、こちらが風下のため、下品なニコチンの匂いが漂ってきた。
その時だった。
「キエー・キエー・・!」という、雄たけびとともに、まるでスローモーション映画のように、放物線を描きながら怪鳥が上空を飛んで行ったのである。
サッと着地をする瞬間、スカートがパラリとひる返り、紺のチョウチン・ブルマが見事に目に飛び込んできたのである。
「ね、ね、ネーちゃんじゃねーかー・・・ネーちゃんだんべー・・・!」
ロクが、驚いて立ち上がった。
なんと、腹違いの姉のカズコだったのだ。
彼女は、確か叔母さんの家に引き取られたいたはずである。
何故、こんな場所に現れたのだろうか・・・・・・?
カズコは着地と同時に、再びキエーと雄たけびを上げながら、ヤマとトラに向かってダッシュしたのだ。
不意を突かれた彼等は、慌ててモクを投げつけたのである。
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「こんなところに、でっけえゴミがあるなー・・・!」
カズコが挑発するように、二人に向かって叫んだのである。
「なんだ、このアマ、俺たちとデートでもしにきたんきゃ・・・グ・ヘ・ヘ・ヘ・ヘ・・・!」
トラが、下品に笑い飛ばした。
「デート・・・笑わせるんじゃねーぞー・・・自分の顔を見て言いな・・・面白い顔をしやがってー・・・利根川に汚ったねーゴミがあるから、掃除に来たんさー・・・!」
彼女は、完全にトラとヤマにケンカを売っていた。
「このアマ、いい度胸をしているじゃねーかー・・・軽く揉んでやるんべーかなー・・・!」
カズコも女性にしては大きい方であったが、どう見ても二人との身長差は20cm以上はあった。
しかし、彼女は決して動じることはなかったし、むしろ、この状態を楽しでいるようだった。
その時、ヤマが一歩前に踏み出して、長いリーチを生かして、彼女の胸元を掴んだのだ。
「オイオイ・・・ゴミじゃなくて、ブタか・・・?」
カズコは軽蔑した顔で、ヤマにツバを飛ばした。
だが、ブラインドを突いて、トラが素早く後方に回り、彼女を羽交い絞めをしたのだ。
見事なまでの、チームワークだ。
「ウ・キョ・ヒョ・ヒョ・・・ウ・キョ・ヒョ・ヒョ・・・!」
二人の勝ち誇ったかのような高笑いが、利根川の河川敷にコダマとなって響いていたのである。
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来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス