第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(89)
カズコの夢は、最強の女子プロレスラーになることだった。
当時、プロレス界では、ジャッキー佐藤とマキ上田によるビューティーペアーが結成され、マッハ文朱と赤城マリ子が所持するタイトルに挑戦して、みごとに勝利をモギ取ったのだ。
おまけに、リング上で「かけめぐる青春」という歌をうたい、この業界では圧倒的な地位を築いたのである。
宿敵は、阿蘇しのぶと池下ユミのブラックペアーで、数々の熱戦が繰り広げられていた。
女子プロレスは全国ネットでテレビ放映され、彼女たちが歌うと、色とりどりのテープや花びらが客席から飛んできて、まるでオタクがアイドルを応援しているかのようだった。
テレビ放映があった翌日に学校へ行くと、全員がボックスを踏んでいるのである。
これは、彼女たちが♪ビューティ・ビューティー・ビューィーペアー♪と歌いながら、誰でも簡単にマネが出来る、ボックスダンスをしていたからである。
団員のハツは、毎日2時間も連続して踊りまくり、ダンスのプロを自認していた。
彼は様々なアレンジを加えて、右回り、左回り、一回転、二回転、三回転ジャンプ等・・・器用に踊っていたのであるが、母親のヨリコさんからは気持ち悪いと罵倒されていた。
なぜなら、彼女は舟木一夫さんの絶対的なファンだったからだ。
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テレビに映るビューティーペアーに、触発されてたのだろう。
生まれつき粗暴なカズコは、女子プロレスは天職だと思ったのである。
しかし、超ローカルなイナリ山には、練習場所も練習相手もいなかった。
そのため、イカレタ野郎を見つけては、戦いを挑んでいたのだ。
これは、試合というよりは実践である。
最初に血祭に上げられたのが、運の悪いヤマとトラだった。
彼等は、女ということで油断をしたのであろう・・・結果は秒殺だった。
その後も戦いは続き、半年もするとイナリ山からイカレタ野郎は完全に姿を消してしまい、人々が平和に暮らせる安心・安全な村になった。
みんな恐れをなして、逃亡してしまったのである。
時折、エリア外から命知らずのヘタレ野郎がチャレンジをしてきたが、彼女に勝利する者は現れなかった。
カズコは連戦連勝で、SZYS認定イナリ山ヘビー級チャンピョンの座に短期間で登り詰めたのである。
ちなみに、SZYSとは権さんの経営する正直屋スーパーの略語である。
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そんな彼女に、密かに恋をする者が現れた。
命知らずも甚だしいと、全員が止めに入ったのだが・・・なんとも、恋は盲目だった。
それは、ボックスダンスのプロを自認する、我らがハツ君であった。
彼は、利根川の河川敷で大男二人を相手に、華麗に戦う彼女の姿を見て、みごとに、心をワシ掴みにされてしまったのである。
恋しい恋しいカズコ様・・・・・・!
何度、手紙を書き直したことだろうか・・・・・!
いつしか、彼の心は紅蓮の災に包まれ、その思いを伝えるべく、ついに・・・ついに・・・ついに・・・玉砕を覚悟して・・・・・カズコのもとへ、向かったのである。
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来月号に、つ・づ・く ♪ ♪ ♪
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス