第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(98)
悲鳴を上げて逃走するトラとヤマを後目に、我々3人は勝利の雄叫びを上げていた。
「ウオー・ウオー・ウオー・・・!ウオー・ウオー・ウオー・・・!」
ハツが興奮して、激しく八木節を踊り始めた。
「オイ・オイ・・・俺たちって、スゴーくねーかー・・・スゴすぎるんべー・・・!」
ロクもシンクロしながら、踊りまくっていた。
「だよなー・だよなー・・・オレたちは、無敵だんべー・・・あいつらが束になってかかってきても、負ける気がしねーぜー・・・!」
私も、調子に乗って彼らに続いたのだ。
「そうだんべー、そうだんべー・・・あのクラスなら10人はOKだよなー・・・!ウ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョ・ヒョーン・・・・・!」
「おい、ハカチェ・・・10人じゃ少ねんべー・・・20人くらいイケるんじゃねーかー!」
ハツが、口角に泡を飛ばしながら真顔でせまってきた。
「言うねー、おっしゃるねー・・・キミ達よー・・・でもよー、50人くらいはなんとかなるなーーー・・・ウ・キ・キ・キ・キ・・・!」
ロクが大きく胸を張り、自信満々にブチかました。
脳ミソにドーパミンが満ち溢れた三人は、人生最高の日を思いっきり満喫していたのである。
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「トッ・トッ・トッ・トッ・・・おい、何か忘れていねーかー・忘れているんべー・・?」
ハツが正気に戻ったらしく、急にキョロキョロと周囲を見回した。
「そうだ・・・オレたちの目的は、カズコさんを守ることだったんべー・・・!」
さっきまで浮かれていた三人は、彼女の姿がないことに、やっと気づいたのである。
「早く見つけてやらないと、大変なことになるぞー・・・!」
ハツは不安で、今にも泣き出しそうになっていた。
「どこにいるんだんべー、どこにいるんだんべー・・・!」
必死に捜索していると、そこから5メートルほど離れたところに、人の気配を感じたのである。
近づいて見ると、岩と岩の間に白い灰をかぶったカズコがいたのだ。
彼女は横に転がりながら、本能的にここに隠れたのだろう。
逃避する途中に石に当たったのだろうか。
額から、真っ赤な鮮血が流れ、失神状態で横たわっていた。
「おい、みんなー、カズコさんがいるぞ、早く、助けんべー・・・!」
ハツが大声で叫んだ。
「しかしよー・・・どうするかな・・・?」
やって来たロクが呑気に考え込んでいると、ハツがまた大声で叫んだ。
「どうするもこうするもねんべー・・・力を合わせて、引き抜くしか方法はねんべー!」
彼の力強い言葉に従い、三人は力を合わせることにした。
「せーのー、せーのー、せーのー・・・!」
「せーのー、せーのー、せーのー・・・!」
しかし、思ったようには進まなかった。
「なんかよー、石の角に当たっちゃってるんじゃねーかー・・・!」
やる気のないロクの発言に、ハツは激怒して、さらに声を張り上げた。
「おめーらー、ちゃんと引っ張れやー、力が足りねえだよー・・・いいかー、いくぞーせーのー・せーのー・せーのー・・・!」
彼が先頭になり、それにロクと私が続いた。
「せーのー、せーのー、せーのー・・・!うひょー・ひょーひょー・・・」
3度目のチャレンジの後、急に力が抜けて、後方へ2メートルほど飛ばされたのだ。
「ハツ、どうだった、抜けたんかー・・・!」
私が尋ねると、彼はカズコのジャージを両手でかかえて、興味深そうに岩の間を眺めていた。
「おい、やばいんじゃねーのか・・・!」
中には、下半身をみごとなまでに露出した彼女が取り残されていた。
その姿に、思わず笑い声を上げそうになったが、必死になってこらえた。
「しょうがねーなー、スボンだけ引き抜いてもなー・・・じゃーよー・・・反対側から引っ張ろうぜー・・・!」
私の提案により、今度は彼女の両手を持って上から引っ張り出すことになった。
「そうだな、そうだな・・・今度は、ちゃんとやろうぜ・・・!」
ハツは、何やらブツブツと言いながら場所を移動した。
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「せーのー、せーのー、せーのー・・・!」
「せーのー、せーのー、せーのー・・・!」
「せーのー、せーのー、せーのー・・・!うひょー・ひょーひょー・・・」
再度のチャレンジの末、またしてもスポッと力が抜けて、後方へ、2メートルほど飛ばされたのだ。
「ハツ、どうだった、抜けたんかー・・・抜けたんかー・・・!」
私が尋ねると、彼はカズコのジャージの上着を両手でかかえて、呆然とした状態で、岩の中を見つめていた。
「おめー、ちょつと、やべーぞ、やっちゃったなー・・・やべんじゃねー・・・!」
岩の間には、マネキンのように完全に上半身を露出したカズコがいた。
「オイ・オイ・オイ・・・何やってるんだよー・・・こんなことをしたら、姉ちゃんちゃんに、ブッ殺されるぞ・・・!」
三人は事の重大さを悟り、お互いの顔を見つめ合い、三度うなずいた。
「ちょつくら、失礼しまーすー・・・!」
突然、ハツはそう叫ぶと、忍者のように姿を消してしまった。
その走りは、まるで世界記録保持者のボルトンのようであった。
「あのヤロウ、消えやがったなー・・・!」
と、言いつつも・・・身の危険を察したロクと私も、足早にトンズラをかましたのである。
岩の間には、紺のブルマ1枚を着用し、上半身をみごとなまでに露出したマネキンが取り残されていたのであった。
誠に残念ではあるが、我々救助隊は任務を遂行することなく、遁走してしまったのである。
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来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
☆バンビー
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス