第2章 アーノルド♡ハカチェ∞ソクラテスの追想(110)
「いいわよ、いいわよ、アンタには負けたわー・・・本当は10万円なんだけど、半分の5万円にしとくわー・・・アンタ、ラッキョウよー・・・!」
「いやいやいや・・・勘弁してくださいよー・・・田舎者のボクにはムリです。そんな大金は出せませんよ・・・!」
「じゃー、しょうがないわねー・・・超ディスカウントして2万円でどうかしら・・・こんな金額で、ニューブクロ荘に住めるのよ・・・しかも、貴賓室よー・・・?」
「・・・でも・・・もうちょっと、勉強してくださいよー・・・!」
「勉強だなんて、アンタ、なかなかヤルわね・・・、じゃー、いくらなら良いのよ・・・!」
ハツは、しばらくの間、思案していたが、何故か、口に出すことをタメらっていた。
「そうですね・・・そうですね・・・そうですね・・・!」
彼の煮え切らない態度に、オーナーは少々イラついていた。
「モーモーモー・・・牛さんは、ホルスタインよー・・・はっきり言いなさいよー・・・ アンタの好きな値段でいいから・・・思っている事を言いなさい・・・!」
ハツは、今がチャンスだと思った。
「じゃー、お言葉に甘えて、5000円でお願いします。」
「ゴ・ゴ・ゴ・・・ゴ・ゴ・ゴ・・・5000円・・・!」
オーナーは絶叫し、エビが反り返るように、一人バックドロップ一を一気に決めたのだ。
「ズドーン」という物凄い爆音とともに、彼の上半身が頭から床板にメリ込んだ。
「オーオーオー・・・オーオーオー・・・オーオーオー・・・!」
と、セクシーな嗚咽をもらしながら、ブルブルブルと右足を痙攣させていた。
まるで、水中でスパイダー・ウオークをしているような見事な光景であった。
!!!!!!!!!!!!
「一つだけ注意をしておくわね・・・一階に、ベンジャミンというトイレがあるのだけれど、くれぐれも余分な事は考えないで使用してね・・・!」
オーナーは、ニヤニヤしながら、ハツに語りかけた。
「考えるなって、どういう意味ですか。」
「ロダンの考える人ってあるでしょ。トイレは、シンプルが一番なのよ・・・
昔、権一という学生がいたのよ。何を思ったのか、ある日、何本もロープを持ち込んでね・・・訳の分からないチャレンジを始めたのよ。
ベンジャミンという名前をつけたのも彼なの・・・アンタも気をつけなさい・・・無謀なチャレンジはダメよー・・・!」
ハツは、まさかと思い、質問をした。
「その、権一さんという方は、どこの大学へ行っていましたか・・・?」
「たしか・・・T大だったかしら・・・でも、中退して実家へ帰っちゃつたはずよ、そうそう・・・アンタと同じ上州の出身よ・・・今頃、何をしているのかしらねー・・・?」
やはり、そうであった。
トイレにロープを持ち込んだ変人は、まさしくジミー隊長の父親である権さんだとこの時、確信をしたのである。
「権一さんは、凄い人ですよ・・・イナリ山では知らない人はいませんよ・・・
正直屋というスーパーマーケットを立ち上げて、成功した人です。
今は、民生委員をしていて、村のために貢献しています。」
「えーーー、ウソーー・・・あの、権一が・・・まさに、牛さんはホルスタインねー・・・信じられないー・・・信じられないー・・・!」
オーナーは、瞳孔を大きく開きながら、アゴをガタガタと震えさせていた。
「支店も出してますよ。たしか、5か所あったと思います。」
「スゴー・・・スゴすぎー・・・奇跡だわ・・・奇跡だわ・・・!」
彼は、魂を抜き取られた亡霊のように、体を前後に震わせた。
そして、突然、春雷に打たれたかのように、一気に後方にのけぞり返った。
予想したとおり、オーナーは「グオーン」という爆音とともに、頭から床板にメリ込んだのである。
まさに・・・芸術的な・・・ワビ・サビの効いた・・・一人バックドロップであった。
!!!!!!!!!!!!
来月号に、つ・づ・く  ♪ ♪ ♪
☆バンビー
【語り手】アーノルド♥ハカチェ∽ソクラテス